ビーマイベイベー!-3
そんな流れで、わたしはわたしの部屋に戻ってきたのだ。
今日休みなのが、幸いだった。
平日だったら、訳もわからず混乱したまま、学校に行くハメになる。
目の前のわたしは、何故かジャージを着ていた。
学校のジャージである。
少々小柄で、髪はショート、色は薄い茶髪で、それは染めたのではなく生まれつきである。
胸はぼちぼち、足と尻はややムッチリしてきたので、今ダイエット中だったのだ。
大きめな瞳は猫のように気持ちつり上がっていて、鼻と口は小さめかもしれない。
普段は好奇心旺盛な猫のようなわたしの顔(自分で言うのもなんだが)が、今は不機嫌な猫になっていた。
「どうするんだよ、これ……一体、何がどうなってんだ」
「ちょっと、わたしの体を”これ”呼ばわりしないでよね」
「そんな事より、どうするんだよ、これから」
「うーん、そうねぇ……」
家族をどうするのか、学校をどうするのか、今後の生活をどうしていくのか。
問題は山積みだった。
家族に打ち明けるのか。こんなことを打ち明けて信用してもらえるのか。
信用してもらえたとして、その後どうなるのだろう。
ひょっとすると、病院に連れていかれる事になりそうな気がする。
こんな事は病院でもどうしようもないに違いない。こんな病気は聞いたことがない。
そもそも病気なのかすらわからない。
すると、何か国家的な研究材料にされたりしてしまうのではないか……。
嫌な想像だった。
ではしばらく、様子を見たほうがいいかもしれない。
シノブは胡座をかいて腕組みをし、目を閉じて考え込み始めた。
「あのさ、シノブ、しばらくこのままでいようか?」
「…………」
シノブはうっすら目を開けて、黙ったままだ。
元々、口数の多い男ではなかった。シノブは、必要なこと以外はあまり喋らない。
男は言葉より行動で。不言実行。
少々古めかしいが、わたしはなんとなくそういう性格の彼に魅かれた。
シノブはスポーツも勉強も、まずまず出来る方だと思われた。
ただ、大柄で無口なので、なんとなく近づきがたい雰囲気を持っている。
誰からも一目置かれながら、誰とも群れず、誰とも付き合わず孤立している。
孤立しているのを、特に気にするでもないようだ。