疲弊と快楽と-6
ほんの10分程度で佐伯の車が現れる。イタリア製の真っ赤な車は、この暗がりのなかでもよく目立つ。もう50に近いはずの佐伯は、その年齢でなお筋肉質で引き締まった体を維持している。優しげな目元によった無数のしわが唯一年齢を感じさせるが、それさえも佐伯の顔の上では美点に変わる。
車に乗り込むと、どこかの外国製だという独特の香水の匂いが満ちている。軽くキスをしてからスムーズに車を発進させ、片手で器用にハンドルを操作した。窓の外を真夜中の街並みが通り過ぎていく。人通りがほとんどなく明かりの消えた街の様子を見ていると、ささくれ立っていた気持ちが落ち着いていく。
「マヤ、今日は本当にすぐホテルで良いんだね?」
「はい。早く……したいから」
「かわいいことを言う……どれ、ちょっと足を広げてごらん」
佐伯の穏やかな低音の声が耳をくすぐる。少しだけ両足の間を広げると、正面を向いたまま佐伯が手を伸ばしてきた。悪戯な手は太ももを撫で、その内側にそっと指を滑らせる。足の間にある下着の布地に触れられると、その刺激に声が出る。
「あっ……」
指先はその割れ目の部分を丁寧に擦り、マヤの入口を下着の上から突いてくる。車は止まらない。佐伯はマヤのほうに少しも視線を向けないまま、運転を続ける。指は焦らすように陰部のまわりを這いまわる。
「んっ、パパ……気持ちいい……ここ、もっとして……」
「すごいね、今日はもうこれだけでびちょびちょに濡れているよ……あと少しでホテルにつくから、それまで我慢だ」
「やだ……もっと、ここ、くちゅくちゅってして……」
「だめだよ、マヤ。我慢しなさい。部屋に着くまでは自分で触ってもいけないよ? わかったね」
「はい、パパ……」
佐伯は何事も無かったかのように手を引っ込める。快感の途中で置き去りにされたマヤの体は疼きが止まらなくなる。佐伯の目を盗むようにして、その濡れた部分を指でなぞってみる。下着の中に手を入れる。クリトリスを中指でくるくると撫でると、痺れるように気持ちが良くなる。
「んっ……!」
そのまま指を膣に挿入しようとしたところで、佐伯に腕を強く掴まれた。車はいつのまにかホテルの駐車場に着いていた。
「マヤ、どうして言うことを聞かないんだい?」
諭すような口調に、マヤは本当に悪いことをしたような気がしてくる。
「ごめんなさい……パパ……」
「マヤは悪い子だったんだね? 悪い子にはおしおきが必要だ」
佐伯は微笑みながら車を降り、マヤの腕を強く引きながらホテルの中へと入っていった。
(つづく)