茜空-3
ツキちゃんは報われない恋物語が好きだと言っていた。私への想いとだぶらせていたのかもしれない。でも、これが恋だと誰が証明できるの?
何でツキちゃんは私が好きなんだろう。
私は愛することは出来ないけど幸せにしてあげたい、人を好きになったことがない私を好きになってしまった可哀想なツキちゃんを。
でも、少しでも彼女が喜べば私も苦しくなくなるんじゃないかっていう思いが、本当はある。結局私も自分が可愛いんだ。
だって…仕方ないじゃない。
すごく苦しいんだもの。普通に育ってきたはずなのに、普通に愛されてきたはずなのに、誰のことも尊敬できなくて、誰のことも好きになったことがなくて。なんでなのって、誰でもない誰かに問うことすらもうしなくなってしまって。
そこまで考えてはっとした。
私は本当にツキちゃんをほんの少しでも幸せにしたいと思っているのだろうか。むしろ自分が苦しいからツキちゃんも不幸にしてしまいたいと思っているんじゃないのだろうか。
いつか崖から突き落とすために出来るだけ高いところまで上らせようとしているんじゃないだろうか。
『私なんかを好きになるから、いけないんだよ』
嘲笑う、心。
どこからか私の声が聞こえて、ぞっとした。
私はツキちゃんにもう一度キスをして、抱き締めた。
ツキちゃんはとても嬉しそうにしていたけれど、私の心は少しも波立つことがなかった。何も感じなかった。ただ、虚しかった。
窓の外、空は暗くなっていた。どこかで話し声がした。
燃えるように赤い空は一瞬のことだった。少女の想いなんてそんなものでしかないんだろう。美しく、儚く、ただ綺麗な思い出になるはずだったのだ。
END