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茜空
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茜空-1

空が赤かった。どこかで話し声がした。教室はうるさいほどに静かだった。
下校時刻まであと一時間以上もあるのに、教室には二人だけだった。
窓から外を見ると、空はひたすら赤く燃えていて、こんな私よりもよっぽど感情的だと、彼女は思った。


「サコ。」
「何?」
私は振り向いてツキちゃんを見た。
ツキちゃんは少し寂しそうだった。
「ちょっといいかな。」
「うん。」
「この本、叶わない恋の話なんだけど、」
ツキちゃんが今まで読んでいた本を閉じた。
「私、恋愛小説なんてそんなに好きじゃないの、でも、そういう話は気づくと一生懸命に読んでるの。」
「うん。」
「なんか…私なんて無口で無表情で、全然女の子らしくないのに、似合わないよね。」
ツキちゃんは何ともいえない表情で私に笑いかけた。
「恋愛の小説って女の子らしい子だけが読むものじゃないでしょ。
全然良いと思うけどな。」
私が答えても、ツキちゃんの表情は曇ったまま。
「そう、だよね…。
でもね、私悪い終わり方じゃないと嫌みたいなの。
障害を乗り越えて二人が最後に結ばれてハッピーエンドってなると、すごくがっかりするの。
サコ、これって変じゃない?」
ツキちゃんは妙なことを気にする人だ。
「別に良いんじゃない。好みの問題だから人それぞれだと思うし。」
私の言葉に、ツキちゃんは落胆した様子でうなだれた。
「そっか…。
ごめんね、変なこと言って。そろそろ帰ろっか。」
ツキちゃんはのろのろと帰り支度を始めた。私はなんだか煮え切らない気持ちだった。
ツキちゃんは普段冷静で理論的で真面目な人なのに、時々こうして変な質問をする。そして、いつも何か裏切られたようながっかりしたような顔をする。



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