女王様の命令は絶対です <後編>-4
ゆっくりと私の方へと振り向き、
まるで言葉を選ぶようにそう言うユイ。
「いや、まぁ…… スケベなのに変わりはないですけどね?」
「あは、だよね?」
「はい…… でも隆は………… 上手く言えないですけどなんか違うって感じたんです」
「ん………… それはなんとなく…… わかる気がする…………」
そう言って私が笑うと、ユイもまた笑いながら指先で私の涙を拭う。
けれどその瞬間、ふとまた顔を曇らせたかと思うと、
ユイは軽く唇を噛みしめながら、いっそう申し訳なさそうにこう告げた
「だから…… その………… 勇気を出して隆に抱かれてみたんですけど…………」
「…………やっぱり駄目だった?」
「いえ、その逆で………… 本気になってしまいそうだったので…………」
「…………え?」
「隆を本気で愛してしまいそうだったから………… それで…… 恐くて逃げたんです…………」
意外なユイの言葉に思わず慌てる私。
隆と付き合ったのはお試しみたいなもので、
抱かれはしたもののやっぱり同性が好きと思ったから、
だから結局別れるに至ったのではなかったのか…………
「ご、ごめんなさい姉様っ! でもっ えとっ……」
「だ、大丈夫よ? ちょっと驚いてはいるけど…………」
もちろん、ちょっとどころの騒ぎではない。
けれどこの前の事しかり、私は早とちりが多いのだから、
ここはしっかり最後までユイの話を聞かなければと必死で心を落ち着けた。
「隆には…… 父親との事は言っていません…………」
「そ、そう……」
「でも、そんな事など関係なく優しくて…… あんなクセに凄く気を使ってくれて……」
「うん…… 確かに目ざといと言うか………… 妙に空気読んでくれるんだよね」
「あは、でもそれが………… 異性の愛情に飢えた私にはとても響いてしまって…………」
「…………な、ならっ なのにどうして別れるなんてっ!」
私は思わず語気を荒げた。