〈聖辱巡礼・其のニ〉-3
『やったぁ!先生ありがとう!!』
『良かったぁ…これでデート成功間違いなしね!』
『そうだ。先生、一番可愛い服着てきてよ。私達も先生のオシャレな私服見たいからさ』
ペチャクチャと喧しく喜びを表現すると、一方的に待ち合わせ場所を指定して三人は去っていった。
自分も早く帰ればよかったと幹恵は軽く後悔したが、あの三人娘から他校の男子の情報を得られるかもしれないし、あわよくば、自分の物に出来るかもしれないという計算も働いた。
(…ま、仲良くしとけば、いつか役に立つかもな……)
幹恵は鼻で笑うと、保健室の明かりを消して職員室へ向かい、明日の授業の準備を終えて帰路に着いた。
一瞬、友を“潰す”為に携帯電話に手をかけたが、思い直したように手を離した。
梨沙子の失踪からまだ数週間……あまりに連続しての事件となれば、また騒ぎを蒸し返す事に成り兼ねない……。
(今度なにかあったら……フフフ……)
幹恵は不敵な笑みを浮かべて夜道を疾走した。
シルバーに輝く欧州製ハッチバックは、狂気を孕んだ教師の思うままに速度をあげ、暗闇を切り裂く。
ヘッドライトに惑わされた羽虫が、フロントガラスにぶつかって次々と死んでいく……それは、幹恵の作った道を邪魔する者は、全て轢死という悲惨な末路しか無いと言わんばかり……。
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『あ、来た来た!』
『先生〜、こっちこっちぃ!』
約束の日曜日。
琢也を狩ったあの駅が、三人娘との待ち合わせ場所だった。
空は抜けるような青さで、雲一つない晴天。
幹恵の車は日差しを浴びてギラギラと輝いていた。
『キャ!先生綺麗〜!』
『グラビアモデルみたい。素敵ぃ!』
「ちょっと恥ずかしいから大声出さないの!早く乗ってよ」
車の周りではしゃぐ三人娘に困った顔をしながらも、やはり満更でもないようで、幹恵は身体を伸ばして助手席のドアを開け、喧しい娘達を車内に招き入れた。
「もう…みんな見てたじゃないの。恥ずかしいなあ」
教師と生徒を乗せた車は、逃げるように駅から抜け出し、街を駆けた。
三人娘は幹恵をジロジロと眺め、羨望の溜め息をついた。
栗毛色の髪は軽くカールしており、仄かに香水の香りを漂わせている。
淡いピンク色の長袖のブラウスに、クリーム色のミニスカート。そして茶色のロングブーツで足元を固めていた。
琢也と出掛けた時の服にアレンジを加えただけの服。それでも幹恵の私服を見た事の無い三人娘には、充分に魅力的に見える。
一方の三人娘はと言えば、揃ったようにロングのチュニックパーカーにジーンズといったラフなスタイル。違うところと言えばパーカーの色くらいなもので、仲良しな三人姉妹のようだ。