若き富田林氏、危機管理方法-2
えーい!行ってまえ!オレは目をつむりながら、「失礼します!」と言って扉を開けた。その瞬間、オレの顔の横を何かがすり抜け、後ろの廊下の壁にぶち当たった。
『パッリーン!』
ア、アカン、今度は射精2回分ほどチビってもた…
「申し訳ございません。今回はこちらの不手際で不愉快な思いをさせまして本当にすいませんでした!」
オレはガラスの破片が無いところを目ざとく見つけ、無我夢中でそこに土下座をして謝った。うっわ恥ずかし、緊張の余りオクレ社長みたいな声になってもた。
「アホンだら―!誤って済んだら警察イランっちゅうんじゃ!ボケ―!ぶち殺すど―!」
「すいません、すいません、すいません」
オレは土下座のまま、頭を上げることなく繰り返し謝った。
「何をアホの一つ覚えみたいにぬかしとんねん!どないしてくれるんじゃボケが―!」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
アホやないのでパターンを変えた。
「おのら、舐めくさりやがって!おちょくっとんかいガキが―!」
「許してください、許してください、許してください」
ヤバいと思ってさらにパターンを変えた。しゃ―けど、いつまでこうして頭下げとかなアカンねやろ。なんか足がチクチクしてきたど!
こらアカン、このままやったら平静を保たれへん。チョット歴戦の勇士の検証や!ん?ア、アカン右脛の下にガラスの破片が有るやんけ!うっわ、イッタ―!
「お前、ふざけんとんか?ん?何プルプル震えとんじゃ!」
「せ、誠意を見せよう思て、ガラスの上に土下座しています」
ホンマはガラス避けたはずやのにオモックソツイてないやんけ。アカン、メチャ痛なってきた…
「アホぬかせ!お前ワザワザ、ガラス無いと選んで座ったやんけ、それも一瞬で。動体視力のええはずのオレもお前の動きが見えんかったど!」
「いえ、気のせいやと思います。あ、足にガラス刺さってメチャ痛いです」
「ん?なんやお前、えらいキンキンした若い声やのう?ホンマにここの責任者か?」
「いえ、私は責任者とちゃいますが、今日は社長も支配人も不在なんです」
「なんやと!責任者居らんてどういうこっちゃ?さっきの電話のオッサンは責任者行かす言うとったど」
「多分、混乱していたと思います」
アカン、ズボンの脛のとこがだんだん滲みてきたやんけ、血ぃが一杯出てるちゃうか?
「何を都合のええことばっかり言うとんじゃ!舐めとったら前のどぶ池に沈めるど!」
「イエイエ、舐めるなんてトンでもありません」
アカン、貧血やクラクラしてきた…
「まあええ、落とし前の件は後で考えるとして、お前も飲め!」
ん?こいつ今何言うた?なんかイヤな予感がするぞ。
「飲めて、何をです?」
「このホテルの特性コーヒやんけ」
男はそう言いながら、土下座するオレの頭の横に香しい匂いのコーヒーカップを置きよった。
「このカップだけは投げらんとお前のために置いといたったからな」
な、なんちゅうことぬかすんや!こいつ、人間ちゃうぞ!ア、アカン、余計に頭がクラクラしてきた。
「お前のために特別にコレも入れといたる」
男はご丁寧にもポットの中のコンドームを割り箸で摘まみ、そのコーヒーカップに入れよった。そんな親切イラン!
オレはその時に見てもうたんや………端っこをくくってないゴムの口から垂れ流れる白っぽい液体を………