富田林氏、塀の中で過去を語る-4
「お前、オレの親戚でスーパーやってるオッサン知ってるやろ」
「お〜、確か地元の名士に親戚が居る言うて自慢してたのう。ホンマはほとんど血縁関係の無い薄い薄い親戚らしいやんけ!お前の一家は知ってても向こうは知らんねやろ!」
「それが驚くことにオレのことを知ってたらしいわ。ホンでオレの事を見込んで頼みたいことが有るって言うて来よってん」
こいつを見込んで?
「はあ?そのオッサン、ボケたんか?お前を見込むて正気の沙汰やないで」
「じゃかまし、ボケとらんわい!その頼みごとがオレらみたいな若いヤツを探してる言うことなんや。活きのええヤツな」
「若い活きのええヤツ?エロビデオ出演か?それやったらメチャ興味あるがな」
しばらく前、雀荘での雑談でやりたい仕事を言い合った。その時のナンバーワンがAV男優だったのでそれが頭に残っていた。
「ちゃうちゃう、お前の頭はそればかりかい」
「8割はアレのことかな。お前も似たり寄ったりやんけ!」
「まあ、否定はせん」
岸和田がすまし顔で同意した。アホが何気取っとんねん!
「ホンで結局なんやねんな」
「エロビデオはちょっと近いけどな」
「勿体ぶらんと、はよ言え!」
「ラブホテルや」
「はぁあ?ラブホテル〜?それがどないしてん?」
こいつの言うことはを理解するには忍耐が必要やということか。
「親戚のオッサンが国道沿いにラブホテル建てよったんや」
「国道沿いて、あの趣味の悪いホテルか?」
「そや、『ホテルレイクサイド』や」
「レイクサイドって、湖なんて何処にも無いやんけ!」
「名前なんて何でもええんや、一発やるのにホテルの名前なんて気にせえへんわ」
「確かにな。ホンでそれがどないしてん」
「ホテルの清掃係におばはん連中を雇いよったんやけど、そのおばはんらがケンカばっかりして、全然仕事にならんらしいわ」
「おばはんらは歳とって体裁が無くなったらケンカするもんや」
「それで我の強いおばはんらの替わりにオレらを雇いたいちゅうことになってん」
「げっ!マジか!なんでイキナリそうなんねんな?オレいややで!何でそんな気色悪いことせなアカンねん!」
「アホ!清掃なんてムチャ楽なんやぞ、それに時給がええんや!」
「時給がええって?なんぼや?」それやったら話はちゃうで!
「650円や!そこらのバイトより150円高いで」(注:現在中年の富田林氏の若い頃の話です)
「なんや、そんな高ないやんけ!1000円くらいか思たわ。期待した分ガッカリやんけ」
「アホ!清掃にそんな出せるかい!メリットは他に有るんや!どうせ他にもオレらの知ってるヤツばかり雇うんやぞ!清掃の待機時間は暇やから、カブでも麻雀でもし放題なんやで!」
「マジか!それやったら面白そうやの!毎日の雀荘代要らんやんけ!」
雀荘で徹夜したら、勝ち金の大半が雀代に取られてしまう悲しい事情があった。
「そやろ、ホンだらそれ食ったら早速『レイクサイド』に行こか!」
「もうかい!オレ心の準備出来てないやんけ!」
「そんなん居るかい!お前やったら直ぐできるわ」
「ホンマか?じゃ、ちょっと覗きに行こか」
…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…
こうして飯を食べた後、オレ達は問題のホテルレイクサイドへと向かったんや。にいちゃんわかったか?こんな訳で若い頃のオレは変な苦労を買いに行くことになったんや。
今日はここまでにしとこか。続きはまた明日の消灯時間にしたるわ。
えっ?岸和田みたいに勿体ぶるなて?しゃーないやんけ、オレしゃべったら眠たなってきてもたわ。ふぁ〜〜〜あ〜ねむ〜。今日はもう堪忍な…
おやすみ…