夕-12
「な、な、なあ?!」
陽太は腰砕けになり、へなへなと椅子に座り込む。
日本語を喋ろうよ、弟よ。
「今まで陽太が美夜にキスした分……貰ったから」
僕は陽太の耳元でそう言って立ち上がった。
ついでに言うと、僕の恋心への決別と、美夜を傷つけた事に対する復讐もかねている。
「美夜、行こうか」
「うん♪」
背中に張り付いていた美夜は僕の横に移動して腕を抱えた。
見上げる瞳には悪戯っぽい色がうかがえる。
「何?」
「んふ♪どうだった?陽ちゃんとのキスは〜?」
「……大した事なかったな……もっと感慨深いかと思ってたんだけど」
僕の答えに美夜はきゃらきゃら笑った。
「口直ししたい」
美夜とのキスの口実を作って顔を寄せると、彼女はついっと背伸びして軽くキスをくれる。
空はオレンジと紫が混ざった、夕焼けが夜の色に染まりかけている色。
僕を包む美夜のようだと思った。