龍の祝福-6
「ユウジ君、薬箱とか置いてないの? あったら手当してあげるのに」
「無いね。体は、丈夫なんだ」
「しっかし、ホントに何もない部屋ねぇ……ベッドと小さなテレビしかないし」
「この部屋では寝られれば、それでいいんだよ」
普段女の前では自分を装って、遊び人風の男の芝居をしていた。
だが、不思議とショウコの前では素の自分が出てしまっている気がする。
ショウコは干してある自分の洋服の乾き具合を見ている。
「あ〜、だいぶ濡れちゃったから、当分乾きそうもないわね。この部屋には何にもないし。ねぇ、ユウジ君、何して遊ぼっか?」
ショウコは俺の反応を楽しむように、いたずらっぽく俺を見つめる。
明らかに俺を挑発してきている。
俺はおもむろにショウコの肩を自分の方に抱き寄せてみた。
髪に巻いていたタオルがほどけて落ちた。栗色の髪がはらりとこぼれていく。
ショウコは全く動じず、体の力を抜いて、俺にどうするか任せているようだ。
自分の顔をショウコのぷっくりとした赤い唇に近づける。
ショウコは目も閉じずに俺の顔を薄笑いを浮かべて見つめていたが、唇が触れそうな所で、手で俺の顔を押さえて止めた。
「なんだよ、お前から誘ったんだろう?」
「フフ、ユウジ君、あたしとセックスしたくなったの?」
「……さっきの男みたいに、投げ飛ばそうとしても、もう無理だぞ」
「そんなこと、しないわ。一つだけ、条件があるの」
「なんだよ」
「……するなら、イカせてくれないと、いやよ」
ショウコは俺の頭を両手で抱えながら呟いた。
端正な顔はほんのりと朱に染まり、切れ長の瞳は獲物を捕まえる前の猛獣のように俺を見つめている。俺が、ではなく、彼女が俺を支配しているような、そんな気がした。
それがなんとなく癪に障って、俺はショウコの唇を貪るように奪う。
お互いを思いやるような優しいキスでは無かった。
闘いの中でお互いの主導権を主張しあうような、そんなキス。
俺の口の中でショウコの舌が奥深くまで入り込み、ショウコの口内も俺の舌で埋め込んでやった。ショウコが俺の髪を鷲掴みにして、俺の舌を吸うようにした。
俺はショウコの胸をシャツの上から揉みあげた。
思ったよりボリュームを感じるその胸を強く揉んで、シャツの上からでは物足りなくなって、その下に手を差し込んで触れて、なお揉んだ。
その張りのある乳房を揉みあげながら、先端に触れたところでようやく口を離した。
ショウコが、息継ぎをするように、ああっ、と呻いてキスを解いたのだ。
お互いの口元が唾液で濡れ光っている。