龍の祝福-4
「ねぇ、こっちよ!」
「なっ!? ちょっと、なんだお前は、おい、離せよ!!」
「いいから、来なさい!」
雨の中、女は俺の手を引き、狭い路地裏を見つけてそこに逃げ込み俺も引っ張りこんだ。
「ふぅ、楽しかったわねぇ?」
女は、逃げおおせたと確信したのか、悪びれずにそう言った。
雨に濡れて、女の着ている白系の服が肌に張り付き、下着が薄く透けていた。
濡れた女の前髪から、一粒二粒と雨雫がこぼれ落ちる。
その下の女の顔は、屈託なく笑っていた。その顔から、凄みのある色気を何故か感じる。
普通の女ではない。さっきの喧嘩の仕方も、尋常ではなかった。
「あらあら、お兄さん。ほっぺがこんなに腫れちゃって、男前になっちゃったねぇ?」
「お前のせいだろう。一体何のつもりだ?」
「フフ、あたしの事、只見してるから見物料貰おうと思ったのよ」
「チッ、なんて女だ……いつか、痛い目を見るぞ」
「あたしに痛い目を見させてくれる男に、会ってみたいもんだわ。それとも、お兄さんがそうしてくれる?」
女は濡れた眼鏡をハンカチで拭きながら答える。
見た目は、普通の学生風なのに、この女の自信と威圧感は一体何なのか。
女は濡れた服を気にする仕草を見せると、俺の顔をいたずらっぽく見て呟いた。
「服、濡れちゃって気持ち悪いなァ……乾かすとこあると、助かるんだけど」
「そんなの、いくらでもあるだろ。俺は、もう帰る」
「あン、釣れないなあ……お兄さん、家、このあたりなんでしょう?」
「それが、どうした」
「連れてってよ」
「断る」
「もう、お兄さんもさっきの連中と似たようなもんでしょう? あたしが、遊んであげるわよ。あ、そうだ、あたしショウコっていうの。お兄さんは?」
「俺は、子供の遊びに付き合ってる暇は無いんだよ」
そういって帰ろうとする俺の体にショウコが抱きついてきた。
ショウコの手が、俺の股間に触れ、俺の顔を見つめて言った。
「フフ、お兄さんも、オ・マ・ン・コ、したいんでしょう?」