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雑踏の片隅で
【その他 官能小説】

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龍の祝福-3

 小太りの男が女の手を掴んだ瞬間、女は掴まれた手を引いて、男の重心を前方にずらした。
 そのまま前につんのめった男を、女はその体重と勢いをそのまま利用して投げていた。
 合気投げ。道路に投げられて、したたかに全身を強打した男はそのまま呻いている。

「このアマ!」

 襲いかかる気配を見せた長身の男の膝裏を、女は足を鞭のようにしならせて鋭く蹴りこんだ。
 女のしなやかな白い足がミニスカから男の膝裏に伸びた。ムエタイのローキックだ。
 膝裏は足の急所で、きちんと攻撃を受けないと、大きなダメージを受けてしまう。
 長身の男は油断したのか、喧嘩慣れしていないのか、まともにその蹴りを喰らっていた。
 男がその威力にひっくり返ると、隙を見て女は逃げてきた。なんと、俺の方にである。

「ちょっと、そこの兄さんさあ、女の子が襲われてんのに傍観とはひどいじゃない?」
「はあ?」

 この女は、突然何を言い出すのか。
 人を射抜くような瞳が、俺の目に向けられている。女の口の端が釣り上がっていた。
 俺が唖然としている間に、二人の男が俺の前に来ている。
 一人は、投げられた方だ。蹴られた方は、足を抱えてまだ後方でうずくまっている。
 女は俺を楯にするように、俺の背中に隠れていた。

「おう、兄ちゃんよう、その女、こっちに寄越せや」
「ああ、勝手に――」
「ちょっと、あなた! 恋人をこんなブ男に渡す気なの!?」
「ああン? 恋人だア? 兄ちゃんもこいつの関係者か?」
「は、あんたたちみたいなのが何人かかってきても、一緒よ」
「言ってくれるなア、こらあ!」
「おい、待て、俺はこいつとは関係――」

 言った時にはもう遅かった。男の拳が俺の顔面に迫ってきている。
 避けようとしたが、俺の顔面にヒットした。少しよろけたが、こうなったからには仕方ない。
 再度殴りかかってくる小太りの男の鳩尾に、カウンター気味に正面蹴りを食らわしてやる。
 まともに当たり、男の攻撃も俺に当たったが、威力は小さいものだった。
 男の方は腹を抱えて、倒れ込んでいる。
 もう一人の男は女を捕まえようとして、前に出た所を女に足を踏まれ、重心が動いた所を横に投げられていた。支え釣り込み足。柔道の技だった。
 気づくと、人が見物に集まり始めている。警察沙汰はマズい。
 俺は急いで立ち去ろうとすると、女に手を引かれた。


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