龍の祝福-2
「なぁ、姉ちゃんさァ、だんまりじゃあ、お互い面白くないだろうがよう?」
「ちょっと遊びに付き合ってくれって言ってるだけじゃン、おう?」
女に無視されていた男共は、次第に苛立ってきたのか、口調が荒くなってきている。
女は意に介さず、そればかりかフッと鼻で笑うような表情を見せた。
背は高からず、低からず。丈の短めなスカートに、白地にプリントの入ったTシャツを着ている。
いかにも学生という服装だが、女の怖いもの知らずな態度とはどこかミスマッチな気がした。
男たちは、明らかにその女の態度に憤慨している。
「おう、舐めてんじゃねぇぞ、女ァ!」
「痛い目見ないうちに、付き合えやコラア!」
馬鹿な女だとつくづく思う。嫌なら、相応の断り方があるだろう。
男共の顔を少し立てるような断り方をしてやればいい。それで駄目なら、逃げてしまえばいい。
助ける気は無かった。
この街に来て相当の期間肉体労働をしていたので、腕力はそれなりについていた。
実際、何度か荒事に巻き込まれたこともあった。
その荒事を、あの女の為にしてやろうとは思わない。
俺もあまり好きになれなさそうな女だと思ったし、相手は三人だ。
さすがに勝算は薄いし、しかも女を守りながらというのは無理な条件である。
事を荒立てて警察沙汰になるのは、俺にとってもっとも避けたい事だ。
せいぜい上手く逃げ出すことだ。俺はそんな事を思っていた。
「さあ、姉ちゃん。そろそろ行こうぜ、雨宿りにさァ!」