昼-3
万策尽きた俺は大学内のカフェでやけ酒……もとい、やけコーヒー。
「陽〜ちゃん♪」
そんな俺の背中に抱きついてきたのは、つい最近までお気に入りだった美夜ちゃん。
「最近、冷た〜い。バイト忙しいのぉ?それとも、単位落としそう?」
美夜ちゃんは巨乳を俺の背中に押し付けて耳元で話す。
うわあ……今まで思った事なかったけど……ウゼえ。
キツすぎる香水は鼻につくし、甲高い声が耳障りだっつうの。
そんな事を思っていても顔には出さないフェミニストな俺。
「まあ、そんなトコ」
適当に誤魔化して苦笑い。
頼むから早くどっか行ってくれ。
「元気もな〜い。もしかして風邪?最近、流行ってるよねぇ〜元気印の朝陽ちゃんもお休みしてるもん」
……ん?朝陽?
「美夜ちゃん、朝陽知ってんの?」
「お友達だもん。陽太と研究グループ一緒だったよね?」
おお、思いがけない所に共通点みっけ!!ウザいとか思ってごめんよ、美夜ちゃん。
「朝陽、休んでんだ?」
「うん。2日くらいかな?たまったプリント持っていくんだ♪」
美夜ちゃんはカバンからクリアファイルを取り出す。
バッ
気がついたら、俺は美夜ちゃんの手からそれを奪っていた。
「陽ちゃん?」
美夜ちゃんが固まったまま、キョトンと俺を見つめる。
「あ……いや、俺……俺が持ってくから。他にも大事な用があるし……さ……」
なんか言い訳みたいな良く分からない事をモゴモゴ言う俺を、美夜ちゃんはジト目で見ていた。
「ホント?助かるぅ。美夜、バイト抜けれなくってさぁ〜困ってたんだ。あ、コレ地図ね。朝陽ちゃんにはメールしとくぅ〜じゃあ、よろしくねぇ〜」
なんか追及されるかなって思ったけど、美夜ちゃんはあっさりと俺にファイルを託してバイトへ行ってしまった。
少し肩透かしを食らいながら、美夜ちゃんがくれた地図に目を移す。
まずは誠心誠意、心を込めて謝る。
俺は地図を握りしめて、朝陽のアパートに向かった。
朝陽のアパートは防犯のしっかりした所。
ロビーで部屋番を押すと、どうぞ、と気だるそうな朝陽の声が答えてドアが開いた。
そのままエレベーターに乗って、朝陽の部屋の前まで来る。
部屋のドアの前で立ち止まって大きく深呼吸してからチャイムを鳴らした。