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画面の中の恋人
【純愛 恋愛小説】

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画面の中の恋人-5

 翌日、またいつものように仕事から帰ると、ほぼ同時に夫が帰宅した。「おかえりなさい」と声をかけてもやっぱり無言。2階の部屋へと階段を上がる後ろ姿を見ながら、そのスーツの背中がしわくちゃなのを見ると、ほんの少し悲しくなった。何度スーツをハンガーにかけるように言っても、床にくしゃくしゃにして置いておく癖がなおらなかった。おそらく、いまも2階で彼の洋服は適当に床の上に散らばされたままなのだろう。

 気乗りしないまま台所に立ち、二人分の夕食をテーブルに並べ、誰もいないダイニングでテレビを見ながら食べる。乃理子が自分の食器を片付け、浴室に向かったのを見計らって夫が夕食を食べに下りてくる。こういう状態を異常だと感じなくなったのは、いったいいつからだろう。熱いお湯を頭から浴びながら正面に備え付けられた鏡を見ると、そこに映る乃理子の顔にはやはり表情が無かった。

 浴室から出て台所へ行くと、夫が使い終わった食器が重ねてある。ざぶざぶと洗って水切りカゴに伏せる。部屋干ししていた洗濯ものを夫のものと分け、夫の分はたたんで階段の1段目に重ねて置いておく。簡単に水回りの掃除を済ませて、1日の家事が終わる。

 昨日の夜にあまり眠れていないせいか、頭の芯のほうがどんよりと重く、軽い頭痛がする。自室に戻ってパソコンの電源を入れ、画面の立ち上がりを待つ。

 アミューズのトップページ。『メッセージが届いています』の赤文字。乃理子は大慌てで受信ボックスを開き、メッセージを確認した。新しいメッセージは一通。差出人は、名無男。

『ミコさんへ。 こんにちは……こんばんは、かな? 昨日はメッセージありがとうございました。ミコさんのブログは僕のほうこそ読むのを楽しみにさせてもらっています。コメントを入れ続けるのはもしかして迷惑なのかな、と思っていたので、そうではないとわかって安心しました。うまく言えなくて申し訳ないのですが、一生懸命に等身大の自分と向き合おうとする姿が素敵だな、と思って応援していました。

 僕のことがもっと知りたい、とのことですが、ご質問いただければ答えられる範囲でなんでもお答えしますよ。ただ、こういった場所ですので、あまり個人的なことは答えられないこともあるかと思いますが、それは許してください。

 もっと仲良くなりたいなんて言ってもらえるとは思っていなかったので、とても嬉しいです。これからは、もし良かったらブログへのコメントを入れるだけではなくて、こうしてメッセージのやりとりを続けていけたらいいなと思いますが、御迷惑でしょうか?  名無男より』


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