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画面の中の恋人
【純愛 恋愛小説】

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画面の中の恋人-6

 乃理子は書かれてある言葉のひとつひとつに、喜びを噛みしめながら読んだ。大急ぎで返信を書く。

『名無男さんへ。 突然のメッセージにも丁寧なお返事をいただき、ありがとうございます。メッセージのやり取りを続けることは、こちらのほうこそお願いしたいくらいです。
質問には何でもお答えいただけるとのことでしたが』

 ここまで書いて、乃理子の指は止まった。どうしよう、何を質問したらいいんだろう。漠然と名無男のことがもっと知りたいと思っただけで、具体的な質問は頭に無かった。少し考えて、まずは誰もがプロフィールページに載せているような基本的なことから聞いてみることにした。

『名無男さんはどちらにお住まいですか? わたしは生まれも育ちも関西ですが、夫と結婚したときに関東に来ました。あれから10年たちますが、いまだに慣れないことも多いです。また、お仕事はどういったことをされていますか? わたしのほうはブログにも書いてある通り、小さな会社の事務をやっています。あ、こちらの年齢は30前後ですが、名無男さんはおいくつぐらいでしょうか? それから』

 また指を止める。ひと呼吸おいてから、キーボードを叩く。

『ご結婚されていますか?』

 本当はこれが一番聞きたかった。乃理子が結婚しているのはブログにも散々夫の愚痴を書いてきたので、むこうはよく知っているはずだった。聞いたからと言ってどうなるものでもないが、どうしても知っておきたかった。

『なんだか本当に質問を並べただけのメッセージになってしまいました。もちろん、内緒にしておきたいことは答えなくて大丈夫です。また、逆にわたしへの質問が何かありましたら、何でも答えます。
 それでは、また。 ミコより』

 今度は読み返すと送信できなくなりそうだったので、すぐに送信ボタンを押した。メッセージが無事に送信されたことを示す画面を見ながら、どきどきと高鳴る胸にそっと手を当てた。


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