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画面の中の恋人
【純愛 恋愛小説】

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画面の中の恋人-2

 画面の明滅が止まる。

 乃理子は無表情のまま使い慣れたマウスに細い指をのせ、インターネットのお気に入りページをクリックした。カラフルなキャラクターが散りばめられたトップページが表示される。

『アミューズ』というそのサイトは、可愛らしいキャラクターを使ったミニゲームをメインに、ブログやチャット、簡単なメッセージのやりとりもできる最近流行りのSNSサイトである。乃理子も半年ほど前、職場の友人に紹介されてここを利用するようになった。最初は見ず知らずの相手が画面の向こうにいることに対して途方もない違和感を感じていたが、ミニゲームやチャットを通じて気の合う仲間ができてからは、毎日のようにここで遊ぶようになった。

 お互いのブログにコメントし合ったり、時間があるときにチャットで職場や家庭の愚痴をこぼし合ったりするだけで、これまで感じていた寂しさが癒されていくような気がした。ここではリアルの友人に話せないような内容でも平気で会話のネタにすることができる。相手が見ず知らずの他人で、おそらく一生会うこともないと思うと、肩の力を抜いて素直な自分でいられる。『アミューズ』にログインした瞬間、表情の無かった乃理子の顔に微笑みが浮かぶ。

 トップページにパスワードを打ち込んで、『マイページ』と呼ばれる自分のページを開く。そこには乃理子が利用するサービスや自分宛てのお知らせが集約されて載っており、広いネットの世界の中における自分の部屋のようなものだった。

 今日のお知らせは2件。『メッセージが届いています』『あなたのブログにコメントがありました』という文が赤字で目立つように表示されている。メッセージの受信ボックスをクリックすると、ゲーム仲間のハルカからチャットの誘いが入っていた。

『ミコへ。 今夜0時からみんなでチャットやってるから、ヒマだったらのぞいてください。もちろん話題が尽きるまでエンドレスでやるつもり! 例の彼との話、みんな聞きたがってるよっ☆ ハルカより』

 ミコというのが乃理子がこのサイトで使っている名前だ。特に意味はなく、このサイトを使い始めたときに適当に考えた。今ではそれが仲間内で定着している。

 時計を見ると、午前1時を少し過ぎたところだった。ハルカに返信を打つ。

『ハルカへ。 メッセありがとう。ごめんね、明日の朝も早いからチャットはまた今度にします。例の彼とはそのまま、特に進展はナシ。週末のチャット会は絶対に参加するから、みんなによろしくね! ミコより』


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