チャンネル-3
そして次の日、彼が暴れ馬に乗ろうとすると、ある男が彼に言った。
「ジョニー、その馬をのりこなせる奴はこの世にはいねえ。そいつはここの英雄だった。一月程前に殺されちまったが、あんなすげえガンさばきをする奴はもう現われねえな。その馬はよぉ、弱い男は乗せたりしねえ。馬自身わかるんだな。そいつが強い男か、弱い男か…」
男は煙草に火をつけると、煙が目にしみるのか瞬きをしていた。
「俺はこの馬に乗りたい。どうしたらコイツに認めてもらえるんだ?」
彼はどうしても、その馬に乗りたくて仕方がなかった。
「早撃ちで誰にも負けない男になるこったな。それしか俺には言えねえ」
男はトニーといって、昔はガンマンの天才と呼ばれた腕前だったという。しかし老いには勝てず、今はバーで酒を飲むことが仕事のようだ。
彼はトニーから話しを聞き、その日から練習をはじめる事にした。
「あの鳥を撃ってみろ」
トニーに言われた通り、彼は狙いを定めて何度も撃つものの、鳥に察知され、木にとまっている鳥にさえ、逃げられてしまった。
「若造…それじゃ駄目だ。腰に、銃に触れた瞬間に勝負は決まるんだ。俺はあの馬にはのれねえ。だから今のお前は百年たっても乗れないぜ。無理なこった」
しかし諦めを知らない彼は、練習に明け暮れた。そして振り向きざまに、股の下から、二丁で、彼はこつを掴むとスポンジのように吸収していった。
バーにいた男たちが彼の成長に驚き、馬鹿よばわりする連中も次第に消えていった。
ある日、彼は暴れ馬に乗る決心がついた。周りには興味を持った連中が酒を飲みながら賭けをはじめていた。女たちも男に交ざり賭けに入る者もいた。
「見ろよ!ジョニーが馬に乗るよ」
馬の鞍に足をかけると馬は鼻息を荒げ、首を振り、後ろ足を蹴りはじめた。
「おい、乗せてくれよ!」
彼が言うと、馬は更に暴れ出した。そして馬は彼を放り出すと、また元のように静かに横目で彼を観察していた。
「俺の事が嫌いなんだろ?」彼が言うと、馬は鼻で笑うかのように上唇を鼻に押上げ、歯茎を出して笑っていた。
「嫌な奴…」
馬のくせに!と思いながら彼はバーへ入ると酒をあおりだした。男たちの笑いの種となった事に後悔はなかったが、あの憎たらしい馬を征服したくて彼はウズウズしていた。女が一人、彼の隣に座った。
「俺に寄るんじゃねえ!」
彼はじぶんの不様な格好をさらした事に恥てはいなかったが、近くに思いをよせる女性にこられると、思った事と反対の言葉が口をつくのだった。
「照れちゃって、かわいいんだから…」
「うるせえ…」
その晩彼は、酔った勢いで彼女を抱いた。
ある日、彼は仲間の男たちと遠く離れた町まで買い物をしに出掛けた。戻ってみると、自分達の町が崩壊していた。壊された家や、焼かれたバー、荒らされた女たちの部屋。
「どうしたんだ!」
どうなってるんだ!彼は怪我をした男に話しを聞いた「隣町のゲインズ一味だ。奴らは女たちを連れていきやがった!くそっ」
そこまで言うと男は意識を失った。
「ジョニー!」
「トニー!生きてたか…よかった」
彼は怪我をしたトニーを抱き締めた。
「ゲインズの奴がお前と決闘したいそうだ。お前が行けば女たちは解放するそうだ」
ゲインズは英雄の寝込みを襲い、殺した罪でこの町を追放された。そいつが決闘を申し込んできた。俺が行けばみんなが助かる。
彼は磨かれた銃を腰から取り出すと、なめらかな鉄にキスをした。そして、仲間と一緒に賊の連中と対決することにした。
「必ず助けてみせる」
怪我をした男たちに言うと、問題の暴れ馬に向かって彼は歩きだした。馬は長いまつ毛を瞬かせて彼をじっと見ていた。
「俺もお前が大嫌いだ」
ブーツで赤土を蹴り、鞍に足をかけてまたがると、突然馬は巨体を震わせ暴れ出した。
「今日くらいはおとなしくしろよ!」
馬は狂ったように暴れだした。彼はここで体力を使う訳にはいかなかったが、この馬に認めてもらいたかった。
「おとなしくしねえと、てめえのケツをぶち抜くぞ」彼が大声で叫ぶど馬は鼻をブルブルと言わせながらおとなしくなった。
「それでいい」
巨大な馬鹿馬は地に蹄を響かせながら、大地の向こうへと砂煙を撒き散らして消えて行った。怪我をした男達は彼の姿を見て言った。「まるであいつが生き返ったみたいだ」