前世-1
「今から三百年前、俺が雷帝として人界を訪れたとき・・・当時の葵は二百年を越える王だった」
マダラは時間軸の流れを思い出していた。
(エデンが初めて葵と顔を合せたのは・・・先代の死の王がみた葵の死の・・・転生後の姿か)
「不思議な少女だったよ。
華凜な容姿の内に強い想いを秘めた娘でな・・・」
遠い記憶を追いかけるようにエデンは空を見つめた。
彼女は王というより神のような存在としてあがめられ、側近には神官と呼ばれる者がいたという。
そして、その神官らも彼女を護る者として永遠に等しい命があること。
「人界の王は在位三千年を越えると聞いていた俺は、どういうことかと神官のひとりに聞いたことがあったんだ」
「例え彼女が命を落としても・・・王の証が彼女を選び、何度でも人界の王として転生するのだと言った・・・」
「・・・三千年だと・・・?」
「・・・王の証が彼女を選び続けているのであれば、三千年以上のはずだ」
マダラが独り言のようにつぶやいた。
「葵は詳しく語らぬらしい。
神官が側近として就任から・・・三千年、そこからの数えに過ぎないだろうな。それまで彼女はひとりだった」
「そして今から二十年ほど前、人界の王は・・・葵は命を落とした」
「急速な文明の発達により人界は大きく変わったのだ・・・」
「知恵をつけた人間たちは大地を汚染し、自然を破壊した・・・そのたびに葵は大地を浄化し、自然を蘇らせたんだ」
「それが気に食わないのか、この世界に王は不要だというものが出始めた・・・」
「命あるもの全てを愛する葵は、人間に加担することもなく、等しく動物たちが生きて行けるように・・・と力を注ぎ続け・・・」
「・・・愚民どもが・・・っ!!」
ティーダの瞳は怒りに満ち、この時から人間に対し憎悪のような感情を抱き始める。
「それから百年以上も人間の愚行が続き・・・とうとう、天や大地が牙をむいた」
「・・・天変地異・・・」
「・・・彼女はそれでも立て直しを図ろうと尽力をつくした」
「だが、人界は手がつけられないほど蝕み・・・彼女は荒ぶる天と大地を抑えることができなかったんだ・・・」