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新・ある季節の物語
【SM 官能小説】

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(夏編)-4

そして、あの日… プレイのあとに彼に食事に誘われ、ついにそのときがやってきたのだ。


「…ユリコさん、私と結婚していただけませんか…」

おだやかな笑みを浮かべ、彼は私にプロポーズしてくれたのだ。ずっと待っていた…いつか結
婚の話をしてくることを待ちに待っていたのだ。私はふたつ返事に首を縦にふった。



いつものようにドーナツ屋で近所の奥さんたちとの話に夢中になる。

…ええっ、わたしにカレシがいるんじゃないかって…もういいかな…白状しちゃうわ…
でね、まだ、はっきりしないけど、私、再婚しようかなんて思っているの…旅館もいつまで
続けられるかわからないし、再婚したいって自分の気持ちを考えたら、もう最後かなって
気がするのよ…

…若い男じゃないわよ…オジサンもおじさんよ…相手も奥さんに先立たれてね…私と同じな
のよ…投資会社の顧問をしていて…ええ、優しいわ…したのかって…いやだわ…私って、
セックスなんてあまり興味ないのよ…

みんなの前で、得意げに話をする自分の頬が、自然にゆるんでくるのがわかった。



その十日後だった…。

送られてきたのは、カガワと書かれた封筒に入れられた数枚の写真だった…。それは、私が、
彼に縛られた恥ずかしい写真だった。


そして… 突然、カガワさんとの連絡はとれなくなった。携帯電話が不通になったのだ。


彼にもらった名刺に書かれた会社の電話番号に、初めて電話をしてみる。電話に出たのは、
無愛想な中年の男性の声だった。

「…カガワ イツオって、知りませんね…うちの会社の顧問だって…そんな男は、この会社に
はいませんよ…うちには、もともと顧問なんておいてないから…間違いでしょう…」と、男は
早口で喋ると、機嫌が悪そうにいきなり電話を切った。

焦った私は、あわてて手帳を取り出す。彼の住所は…確か…横浜の方のマンションだと言って
いたはずだわ…。そう言えば、私は彼のマンションに誘われたことは一度もなかった。


…確かにこのあたりだわ…

尋ねて行った横浜のカガワさんのマンションのあるはずの住所は、古びた雑居ビルがたってい
た。交番で尋ねると、この近くにはそんなマンションはないと警察官に冷たくあしらわれた。


数日間のあいだ、私は茫然としていた。カガワさんからはまったく連絡がなかった。そして、
手にした私の預金通帳からは、彼に事業資金として貸した預金のすべてがなくなっていた。



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