ハニービー-4
「あのさ、君は、本当に俺でいいの? 顔見知りなのにさ」
「だってこんな楽そうなカモ、いや、優しそうなお客さんはなかなかいないし。それに、元同級生って何かワクワクしない?」
「まぁ、ワクワクするかどうかは君次第だと思うけど……」
「フフ、伊達に高い料金を頂いてるわけではないわ。じゃ、こっちにいらっしゃい?」
ハナはちゃぶ台をどかして、座布団の上に座り、自分のむき出しの白い太ももをピシャピシャ叩いた。
ここに来い、という事なのだろうか。
スレンダーな体型のわりに足は少々肉感的で、思わず頬ずりしたくなる。
いや、実際遠慮無くそうしてもいいはずなんだが……俺はハナの足を見ながら生唾を飲み込んだ。
「駄目よ、人の足見てそんなエロい事を考えちゃあ」
「それを考えちゃ駄目なら、君は一体何しにここに来てんだよ」
「いいから、ここに寝て」
ハナはどうやら膝枕をしてくれるらしい。
随分ソフトなプレイという気がするが、まあいいかと思った。
それだけ、彼女の足は俺にとって魅力的に見えたのである。
俺は寝転がり、ハナの太ももに頭を載せた。すると、ハナは俺の頭を両手で抱え、優しく撫でさすり始める。彼女のむきだしの太ももの感触は、すべすべで且つ適度に弾力を感じて、実に気持ちがいい。俺はハナの太ももに直に触れたくなって、掌を彼女のももに載せようとしたが、高射砲で撃ち落された爆撃機の如く、俺の手は空中でピシャリとハナに打ち払われた。
「駄目でしょう、勝手に触ろうとしちゃ。このスケベ男が」
「君、随分辛口だなあ、一応俺はお客なのに……でも太もも触るくらい、いいじゃないか?」
「あ、そう。わかったわ、じゃあ少し待ってて」
「わかったよ、わかったからダイブツさんを携帯で呼ぼうとするのはやめろよ」
ハニービー、全く、とんでもない店である。
何でこれがネットで好評と謳われていたのか、どうにも理解できない。
相場の○倍は軽くする店だったのだ。
ハナに当たった俺が、たまたま不運だったのか。
しかし、そもそもハナは、何故こういった仕事をしているのだろう。
人の過去をあれこれ詮索するのは、不粋である。
気の利かない世のオヤジ共は、事が全て終わったあとに、君もこんな事をいつまでもしてちゃいけないよ、などと説教臭い事を言って嬢を怒らせるのだそうだ。
俺はそうはならない。生き方は十人十色だ。
だが、彼女の高校時代からはいまひとつ想像しにくい生き方ではあった。
「ね〜んね〜ん、ころ〜り〜よ」
「なかなか歌上手いな、随分唐突な子守唄だけど」
「そうでしょう。これで数々の男共を眠らせてきたのよ、あなたも眠たくなってきたでしょう?」
「……もし、仮に俺が眠ったらどうするつもりなの?」
「もちろん、そのまま帰るわ」