『The girl&boyU【in girls dream】』-2
意味も理屈も無いまま、ただ惰性でぼんやりと、手前に焦点を合わせた。
男の手の平の上には、2つの長細いもの。
突如現われた、自分に差し出された、これは一体何だろうかと。
泣くことと怒ることに疲れた頭が、心地よい疲労の中で回り始める。
液体に濡れた表面と輪郭、強い光源が作る影。
ふとした瞬間、揺れるその間に白い爪が見えて。
これは指だと思った。
はっとして、自分の膝元に目を落とす。
男の、左手の先が真っ赤に染まり。
それはどろどろと、タールのような血溜りと。
深く、暗い喪失の穴。
男の左手。
左手の、中程の指が、欠けていた。
あとはただ、走っていた。
気付けば見慣れた街中だった、ただひたすらに走っていた。
家に向かっていた。
辺りには誰もいなかったし、何も生きていなかった。
何の音もしないし、何の気配も無い。
これが、男のいなくなった世界なのだと知った。