投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

隣に。
【大人 恋愛小説】

隣に。の最初へ 隣に。 13 隣に。 15 隣に。の最後へ

11-2

 洗濯物を干すにも上着を着ないと寒い。そろそろ土間に干す事にするか、なんて考えながら庭の物干し竿に洗濯物を干していると、匂いを嗅ぎつけたように陽子が外に出てきた。
「こんにちは」
「昨日はどうも」
 私を追い詰めたあのひと言。あれが無かったら私は不安に駆られなかったかも知れない。いや、あれが無かったら知らないままだったかも知れない......?
「大人気だったよ、あなたの旦那さん」
 縁台に腰掛けて私の方を覗き込むようにして言うのが分かったが、私はそちらを向かなかった。
「そうですか。誇らしいです」
 クスッと笑われた。何が可笑しいんだ。
「で、総司は何時ごろ帰ってきたの?」
「朝ですけど」
 私は不快感を隠さない語り口で返した。
「やっぱり。じゃぁあの中の誰かと......かな」
 にんまりと気味の悪い笑みを浮かべる陽子を見てしまった。吐き気がした。
「あなたの旦那は、押されると弱いの。知ってるの」
 義母の言葉が頭の中を反芻する。変に優しい、総司。陽子に言い寄られてセックスし、妊娠させてしまった、総司。目の前にいる女を、刺殺してやりたい気分だ。
 そんな気分が顔に出てしまったのだろう。「怖い顔」と言われ、我に返った。
「少なくとも私は総司に手を出してない。当たり前か。健が一緒だったからね。他の女は知らない。女が集ってたのは事実。それだけは教えておく」
 部屋の中から陽子の義母が窓を叩き、陽子を呼んでいる。私は彼女と目が合い、会釈をした。
 洗濯物を干し終えた手の平は冷たさで真っ赤になっていて、痛いぐらいだ。籠を持ち、陽子には何も言わずに部屋へ戻った。
 明日からは、洗濯物は土間に干そう。そうすれば陽子と顔を合わせずに済む。


 帰宅した総司は、いつも通りの顔で「ただいま」と言って私に抱き付いて来た。少し、一歩だけれど、後ろに避けようとしてしまった。
「母ちゃんは?」
「もう寝たよ」
 そう、と言いながらダイニングの小型テレビをつけ、ニュースを見始めた。私は夕飯のメニューを再度温め直し、総司の前に置いた。いつもの光景だ。
「今日は久しぶりに、一緒にお風呂入ろうか」
 総司は大根の煮物を小さく千切りながらそう言う。中から汁が滲み出てくるのが、対面に座る私からも見える。
 私は声に出さずコクリと頷き、席を立ち、二階へパジャマや下着を取りに行った。


 いつもの様に、タオルを一枚、風呂場に持ち込んだ。
「俺が先に洗ってあげるよ」
 私を椅子に座らせ、肩までの髪を丁寧にシャンプーで洗ってくれた。
 その後、ボディソープを身体に撫でつけ、そのまま愛撫が始まった。
 身体を後ろから抱きしめられ、脚と脚を開かされ、そこを責め立てられると私は痙攣するように動いた。指が挿入され、私の愛液が滲み出る。
 それを合図に彼は胡坐をかいて座り、私を抱くように受け入れ、私は下から突かれた。
 その時、まだシャンプーをしていない彼の髪から、いつもと違う匂いがした。急に現実に引き戻される気がして、私は動きを止めた。
「どうした?」
 総司はもう頂点がすぐそこまで来ている様な苦し気に顰めた顔をしていたが、私は変に冷静になってしまった。
 私が何も言わないのを良い事に、彼は私を突きあげるのを止めなかった。そのまま彼は果てたが、私は全く快楽を感じなかったし、後半は不快でしかなかった。
 身体についたボディソープを洗い流し、自分で自分の秘部に指を突っ込み、洗った。何か、不快だった。
「気分が悪いから、先に上がる」
 彼が何か言ったが聞こえなかった。いや、聞いていなかった。私は身体をさっと拭くと、パジャマの上にカーディガンを羽織って寝室へ向かい、すぐにベッドに潜りこんだ。
 湯上りの総司がベッドに座って煙草をふかし始めたが、私は素知らぬふりをして背中を向けた。
 キンモクセイの香り。冬に片足を、いや、両足を突っ込んでいるこの町で、キンモクセイが咲いているのを見た事が無い。


隣に。の最初へ 隣に。 13 隣に。 15 隣に。の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前