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隣に。
【大人 恋愛小説】

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16-1

「今行くからね」
 土間からスニーカーを履いて外に出る。畑には雪が積もっている。隣の家を見ると、カーテンが閉められていた。見られずに済む。
 雪の上を歩くとザクザクと音がする。すぐにパジャマのズボンの裾が濡れてきて、脚がじんじんと痛む。それでも山の中を目指して歩く。

 後ろを振り返る。結構な距離を歩いた。家の灯りが遠くに見える。もう、脚の感覚はない。スニーカーにも水が染みている。私はそこで、ダウンジャケットを脱いだ。こんなものは必要ない。私は、総司と同じ、冷たい冷たい場所で、お互いの温もりだけで生きて行くんだ。
 パジャマ姿のまま、山の中へと入って行く。木々が覆いかぶさるせいで、三日月は見えなくなった。まだまだ力は有り余っている。もう少し。もう少ししたら私も、総司の隣に着くから。

 辺りが漆黒の闇に包まれ、民家の一つも見えなくなった頃、私は歩く事さえできなくなり、雪の上に座り込んだ。すぐに着衣が水分を吸い込み、身体が冷たくなる。少しずつ、少しずつ、彼に近づく。少しずつ。意識がなくなればもう、総司はすぐそこだ。

「すぐに行くからね」
 朦朧とする意識の中で、総司が私に手を伸ばしている。
「もうそこまで来てるから」
 きっと声にならないだろう。冷たく仄暗い闇の中の、暖かい彼の隣に、私はもうすぐ辿り着く。


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