伏兵は女王様 <前編>-8
「でもユイは決して隆を嫌いになったわけじゃありません………… むしろ今でも好きですよ?」
「うん、そう言ってもらえると嬉しいわ」
「ただ…… それ以上に女の子が好きと言うだけで………… その…………」
「ん…… 大丈夫! 私なりにそれは理解したつもりだから…………」
そう言ってはにかみながら微笑む私に、どこか安堵した様子でユイもまた微笑み返す。
もちろんさすがに女の子を好きになるユイの気持ちは、
頭では理解出来ても今ひとつピンと来ないのだけれど、
隆を嫌ったわけでも、弄んだわけでもない、
純粋に男という生きものがユイの恋愛対象にはならない──ようはそれだけの事なのだ。
「でもそうなると………… 諸悪の根源はコイツに思えるのよね……」
「え!? お、俺?」
「そうよ? だいたい好きな女がいるのに他の女抱いて忘れようなんて…………」
「いや、だからそれは……」
「そもそもがお姉ちゃん、隆にそんな人がいるなんて知らなかったわ!!!」
私の言葉を聞き、驚いた様子で顔を見合わすユイと隆。
「な、何よ? 何か私…… 変な事言った?」
「い、いや…… 別にその…………」
「…………姉様 それはちょっとどうかと思います」
ひきつった笑顔で誤魔化す隆の横で、
ユイが大きな溜息をついていた。
「姉様………… 鈍感は罪ですよ?」
「あ、あはは…… もうこの話題は止めようぜ? なっ?」
「え、えぇ? 何よ二人してっ ちゃんと教えてよっ!!!」
それから程なく私たちは仲良く雑談に興じた。
その大半は、どれだけ女の子が素晴らしいかと言うユイの講義でもあったが、
何より驚いたのは、私がユイのレズトモの中でも有名人だったという事だ。
ユイ曰く、才色兼備でありながら男の影をまったく感じさせない私は、
その筋の方々にはとても魅力的らしく、
ユイもまた、いつかお近づきになりたいと切に願っていたとか……
(だからユイは最初から私を知ってる風だったのか…………)
私は嬉しいような困ったような複雑な思いを抱きながらも、
こうしてユイと知り合い仲直りが出来た事に、
ホッと胸を撫で下ろしていた。