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【サスペンス 推理小説】

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エスカレートする嫌がらせ-6

「ヨネコさん、ここまでされる心当たりはないんですか? よく思い出してください」

「えぇ……? 無いわよ、わたし何にも悪いことしてないもん! もう、オフ会なんてやるんじゃなかった。絶対、絶対あのときの子たちの誰かがやってるに決まってる! ひどい、許さない!」

 ただでさえ汚い顔が、涙で化粧が崩れまくって大変なことになっている。その顔を腕でぬぐって勢いよく立ち上がり、猛然と自分のノートパソコンに向かって何かを打ち込み始めた。後ろから画面を覗き込むと、どうやら例の小説サイトのメッセージ送信画面らしい。

『せっかく仲良くしてやったのに、恩をあだで返すなんてひどすぎる! やっていいことと悪いことの区別もつかないのか、この野蛮人!』

 と打ち込んで、タッチパネルが壊れそうな勢いで送信ボタンをクリックした。

「ちょ、ちょっとヨネコさん、こんなのいきなり送っちゃダメですよ。っていうか、誰に送信したんですか?」

「ふん、サイトの中の知り合い全員よ。ざっと30人はいるかな。どうせもう続けていけないんだから、徹底的にやってやるわ。あいつらだけ楽しもうったってそうはさせないんだから」

 他人を陥れようとしたり、何か悪だくみをしているときのヨネコさんはびっくりするくらいどす黒いエネルギーに満ちている。義父母もわたしの旦那も極めて普通のひとなのに、ヨネコさんはいったい誰の血をひいてこうなったのかと不思議に思うことがある。

 ピコン、と音がして画面が光った。メッセージの返信が届いたらしい。案の定『わけのわからないことを言うな』『何かの間違いです』『失礼すぎる』という内容がほとんどだった。よせばいいのに、せっかく返信をくれたひとにもヨネコさんは汚い言葉を投げつけた。

『うそつき。キチガイ。おまえらの思い通りになんかさせないからな。覚悟しろ』

 またそれを送信する。こうなってくるともうヨネコさん自身が嫌がらせ犯と同レベルかそれ以下になっていると思うのだけど、当然本人はそんなことに気がつくはずもない。

 夕方まで飲まず食わずでそんなことを続け、ヨネコさんは「ケケケ」と奇妙な笑いを漏らしながら帰って行った。ちょっとおかしくなっている気配はあった。


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