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【サスペンス 推理小説】

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迷惑な義姉-1

「モモちゃーん! おはよう、起きてるー!? モモちゃーん」

 ピンポンピンポンと玄関のチャイムがけたたましく鳴らされる。わたしは寝起きのぼさぼさ頭を掻きながら、だるい体をひきずって玄関のドアを開けた。

「……はいぃ」

「おはよう! あら、また寝てたの? もう10時よ、いくら専業主婦ったって、そろそろ起きなきゃご近所さんにも笑われちゃうわよ? ささ、入って、入って」

 入って、って、ここはあんたの家じゃないだろう、それに玄関先でカン高い声を張り上げる方がよほど迷惑だ、と反論する間もなく、ヨネコさんはいつものようにずかずかと我が家に上がり込んだ。

 彼女はわたしの義姉にあたるひと、つまり旦那のお姉さんである。ヨネコさん一家は同じ町内に住んでいる。わたしたちが1年前に結婚し、この2DKのボロアパートで暮らし始めてからというもの、しょっちゅう我が家にやってくる。どうやら子供を保育園だか幼稚園だかに送り出した後、暇を持て余しているらしい。

こっちは早朝から深夜まで働く旦那のために、朝5時に起きて弁当と朝食の準備をし、近所迷惑にならない程度に家事を済ませ、9時半前後からもう一度寝て昼過ぎにまた起きるのだと何度説明しても聞いてもらえない。

「そんなのおかしいわよ、二度寝なんて体によくないわ。早寝早起き、ね、これが健康の秘訣なんだから」

 ヨネコさんは鼻の穴をおっぴろげてフンガーと喚く。わたしだってできることならそうしたい。でも午後からは買い物に行ったり、夕方から短時間パートに出たり(ヨネコさんは勝手にわたしを専業主婦だと思っているが一応働いているのだ)、帰ってきて夕食の準備をして家事をしながら旦那の帰りを待ち、あれやこれやで寝るのは深夜1時か2時になってしまう。せめて午前中のちょっとした時間にでも寝ておかないと体が持たない。

 何度話しても納得してもらえず、旦那に相談しても笑っているばかりで当てにならず、かといって一応は嫁の立場なのであまりヨネコさんを邪険に追い返すこともできず。仕方が無いので、半年ほど前からは天災だと思って黙って受け入れることにした。こっちが迷惑そうな顔をしようが、寝起きだろうが、そんなことは気にもならないらしい。特に用事があるというわけではなく、いつも昼過ぎくらいまでダラダラとどうでもいいことをしゃべり散らし、昼食を食べて、お茶を飲んで、お菓子を食べて、気が済んだように帰っていく。

 お昼ご飯もお菓子もお茶も、何故か当然のようにわたしが準備して出すことになっている。悪い人では無いのだろうが、根本的にどこか抜けているひとなのだろうとは思う。


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