非日常へのスイッチ-1
頭が真っ白になった。
しばらくすると、荒い息音が聞こえた。誰のものでもない、自分の息音だった。
自分の両足が大きく広がったまま、少し震えている。
つい今まで、この足の間にトシオがいて、荒々しく腰を使っていた。
トシオが中を掻き回していた間の事を、ぼんやりとしか覚えていない。
確かなのは、自分の体がその間にとても充実していた事だろうか。
上には天井が見えた。しばらく、上下の感覚さえなかったような気がする。
体を起こすと、広げた足の中心から、トシオの精液がこぼれだしていた。
トシオが放ったのは一回だけだが、その間にわたしは三回は達していた。
一週間ぶりくらいだっただろうか。
トシオの仕事が忙しい事と、年齢的な事もあるのか、セックスの回数は減った。
しかし減った分、一回の質が高いものになった気もする。
時間をかけて、とても深くまでイカされてしまう。
トシオと結婚して10年以上経つが、結婚するまでの間に男性経験はある程度あった。
もともと、セックスは嫌いではなかったが、トシオとは特に相性が良かった。
やがて結婚し、体中でトシオのものを受け入れられるまでに開発された。
自分の体の貪欲さが、悩ましかった。
そこまでされて、なお足りないという感じがある。
トシオにされれば、されるほどもっと欲しくなってしまう。
一週間に一度というのは、同世代の夫婦なら平均的な数字なのかもしれないが……。
トシオは少々変わり者だった。
若い頃はトライアスロンなど、非常にストイックな趣味を持っていた。
体力は抜群にある。今でも、帰宅途中にジムなどに通って鍛えてもいるようだ。
実は一週間に何度でも出来るのではないか、と思ってしまう。
何故敢えてそうするのか考えてみたが、この男は、飢えるわたしが見たいのではないか。
体はもう開発されてしまっていた。心まで開発してしまいたいのだろうか。
トシオは若干歪んではいたが、わたしに何かを無理強いするような事は無かった。
いつの間にか、わたしが自らその道に進むように仕向けられてしまうのだ。
トシオは、君がどうしてもと言うなら仕方ないな、などとささやく。
そういったトシオの歪みを期待するようにもなった。
少々飢えはするものの、結局悦びを与えてくれるからだ。
そして今、彼はその為のある計画を考えている。
ウェットティッシュで、股間から漏れ出る精液と自分の愛液を拭った。
拭いながら、先程の快感の余韻に浸っていた。