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ポテトサラダができるまで
【コメディ 官能小説】

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ポテトサラダができるまで-1

 彼女は震えていた。そのひんやりとした薄暗い部屋の中で。

きまぐれに開閉される扉は一筋の希望の光を見せてはくれるが、同時に彼女を絶望の底へと叩き落とす可能性も秘めていた。ひとり、またひとり。開かれた扉の外へと仲間たちが連れ出されていく。ある者は恐怖に震えながら、またある者は諦観の微笑さえ浮かべながら。

閉じられた扉の中はまた漆黒の闇に包まれる。壁の向こうからは、なにやらガタゴトと物音が聞こえてくるばかり。怖くないと言えば嘘になる。けれども、ここに連れて来られたときに、もうすでに運命は決まっているのだ。

大丈夫。何があっても、わたしはきっと大丈夫。

彼女には、北の大地で大勢の仲間たちと暮らした思い出があった。悪い虫がつかぬよう、また傷つくことの無いようにと大切に育てられたプライドがあった。溢れかえる恐怖と絶望の中で、彼女は待ち受ける運命に身をゆだねようと心に決めた。

 彼女の名は、じゃがいも。そして、ここは冷蔵庫の中である。


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