第2話 愛に溺れて・・・・・・-2
あの日以来、若い男は年増の女の虜になり、通い続けていた。
「ふふ・・・だいぶ良くなってきてるじゃない。今日は私も満足したわ・・・・・・」
若い男は、年増の女で初めてを経験したばかりで、まだ未熟だった。
ただ、この日ばかりは成長を伺わせて、年増の女を満足させていた。
それを物語るかのように、ベッドの脇のくずかごには、使用済みのコンドームが数枚と捨てられていた。
その数は、濃密さを伺わせるほどだった。
「だって・・・ママの表情を見てると、つい僕も燃えちゃって・・・・・・」
「あらあら・・・初めての時に、いきなり音を上げた人のセリフとは思えないわね・・・ふふ・・・・・・」
「もう・・・ママはそうやって、すぐ意地悪するんだから・・・・・・」
若い男はそう言いながら、年増の女の背中に抱きついた。
その瞬間、今まで晴れていた年増の女の表情が一変して、雲行きが怪しく鏡に映し出された。
「ねえママ・・・今度泊りで温泉旅行にでも行こうよ・・・良い所知ってるんだ」
さらに若い男は、年増の女の肩に腕を回して抱きつきながら、耳元で囁いた。
それに嫌悪感を示した年増の女は、眉間にシワを寄せながら横を向いていた。
「私と一緒だったら、親子と間違えられるんじゃないの?。母親と二人きりで温泉旅行だなんて、変な目で見られるわよ・・・・・・・」
「僕は、構いません・・・・愛してる人と一緒なら、どんな目で見られても構いません」
そう言いながら、若い男が年増の女の首筋に顔を埋めると、終演の幕は降りようとしていた。
「もういい加減にしてよ・・・うんざりするわ・・・・・・」
年増の女は、若い男の顔を振り解くと、ベッドから立ち上がった。
「ど・・どうしたんですか?・・・急に・・・・・・。僕・・・何か気に触る事でも話しましたか?」
「ええ・・・そうよ。私は、そんなつもりじゃなかったのに・・・・・・」
「そんなつもりじゃないって・・・僕はママの事、愛してたんですよ!?」
若い男は、取り乱しながら年増の女に迫った。
「そんな言葉、安っぽく使わないでよ」
「違う!・・・本当なんです!・・・本当に僕はママの事を・・・・・・」
「そう言うのはね・・・普通は抱く前に言う事なのよ。あなたは結局・・・これに誘われた分けじゃいないの?」
そう言いながら、年増の女はベッドに片脚を上げて、若い男に見せつけるように黒いパンティーストッキングをゆっくりと履いた。
見る見るうちに、透明感漂う黒い脚に変貌する様は、若い男に悩ましく映っていた。
しかし、それに惑わされない様に若い男は首を横に振ると、また年増の女に迫った。
「そりゃあ確かに、始まりは不純でした。でも・・・僕はママを抱いていくうちに・・・ママの事を好きになって・・・だから・・・ママを愛してしまったんです!」
「あらあら・・・すっかり逆上せ上がったみたいね・・・少し頭を冷やした方が良さそうね。ねえ・・・所詮あなたは私が初めてだった分けでしょ?」
「え・・ええ・・・そりゃまあ・・・今さら言うのも何ですけど、ママが初めてです」
若い男は、これまでの勢いがどこ吹く風か、顔を赤らめて俯いたまま答えた。
「そう・・・私は初めての女・・・そして・・・あなたは生まれたてのひな鳥のようなもの・・・・・・」
「僕がひな鳥?」
「そうよ・・・あなたはひな鳥・・・ひな鳥は初めて目にしたものを親と思う習性があるの。つまり・・・あなたは初めてを私で覚えて、親鳥と勘違いしたのよ。だから・・・ただ単に情が移っただけの事・・・・・・。まあ・・・実際、歳も離れてるから尚更ね」
「そんな・・・だってママは僕の事を愛してくれたじゃないですか!?」
「愛してくれた?・・・ええ・・・確かに愛してたわよ。でもね・・・それは、ベッドの上だけの事よ。つまり・・・あなたとは初めから価値観が違ってたの」
「それじゃあ・・・僕の事は?」
「心底、愛すのは無理ね。だから・・・これで終わりにした方が良いと思うの・・・お互いの為にもね」
−つづく−