果てしなく生きる-2
わたしのいない日々を見続けてきた。
それは、とても哀しい世界だった。
命には果てがあるのに。
時間には果てが無かった。
命には果てがあるのに。
欲望には果てが無かった。
命には果てがあるのに。
それ以外には果てが無かった。
命には果てがあるのに。
わたしたちはそれに気付いていなかった。
薄れていく。
わたしはついに消える。
この、もの悲しい世界から。
とうめいになる。
とうめいになる。
とうめいに
誰かが笑っている。
誰かが泣いている。
誰かが叫んでいる。
その中に、どうしてわたしはいないのだろう。
分からない。
分からないけれど そんな表情を見ていると 感情が込み上げてくる。
もう消えるというのに
初めて
わたしは
『生きたい』と、そう思った。
――― おぎゃあ。おぎゃあ。
看護婦は、泣き叫ぶ赤ん坊を抱え上げた。
「見えますか?元気な男の子ですよ」
誰かの声を聞いて、わたしは目を開けた。
真新しい世界が広がっていた。
けれどそれは、やはりどこかで見たことのある風景だった。