黒の刻印2-1
(・・・体が重い・・・お父様・・・エクシス・・・・・・)
グレーの髪の美しい青年は横目でアオイを見ている。物静かな雰囲気を纏う青年のその手には大きな鎌が握られていた。
そして隣で目を開けたのはティーダだった。
マダラの作った器という人形に魂をうつして悠久の地へ降りていたというわけだ。
アオイの胸元にある黒の刻印は魂に刻まれたGPSのようなものだ。どこにいてもティーダには把握できてしまう。
マダラは言われた通り黒の刻印を追ってアオイを連れ去った。
このマダラはアオイの魂を覗いていた。
死の国の王は外見や装飾などには興味がない。その者の内なる輝きを見るのだ。
黒の刻印を追いかけ、この少女の魂に触れたときに確かにマダラは見た。光の中・・・白い翼を持つアオイが眠っているのを・・・
(・・・まさか、な・・・)
「マダラ助かった。お前の援護がなきゃ俺は軽く百回は死んでたよ」
「・・・鳥かごから救出と聞いていたが、キュリオ殿とエクシス殿の気配があった。この少女はどのような位置関係にあるのか・・・・・・」
「キュリオの娘だ。・・・似てねぇだろ?血の繋がりがないってのがもっぱらの噂だ」
ティーダは目を閉じたままのアオイの髪を梳いた。
「・・・ぅ・・・ん・・・」
重い瞼をうっすらと開けると見慣れない天井にアオイの思考回路が停止した。
(・・・ここは・・・・・・)
体を起こすと声がかかった。
「目覚めたか」
誰かの足音が近づいてくる。
振り返るとティーダと・・・もうひとり。見たことのない美青年がこちらに目を向けていた。
止まっていた思考回路が動きだしアオイは身をすくめた。
「手荒なことをしてすまなかったな・・・
後ろにいるのはマダラだ」
「マダラ・・・?」
「冥界の・・・マダラだ」
冥界・・・はっとしてアオイは姿勢を正した。この方は[死の国]の王マダラ様なのだと理解したからだ。
「ご、ご挨拶が遅れまして申し訳ございません・・・わたくしアオイと申します」
丁寧におじぎするアオイにティーダが笑った。
「連れ去られたのに頭を下げる姫君なんざ聞いたことがねぇ!だが・・・こう丁寧なのもキュリオの躾けの賜物なんだろうな・・・」