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「未来日本戦記」
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「未来日本戦記」-4

心は龍に近づいていく。
「今まで好き勝手やってきた自分が馬鹿に見えてきてよ、さっさとチームを解散させた。それから曲がったことが大っ嫌いになった訳だ」
心が龍に手を出す。龍はそれを掴み、体を起こした。
「まぁそんなトコ…」
そこで、後ろより足音が聞こえてきた。さっきの不良二人か。
そう思った時、心が呟く。
「三人か」
そして予想通りの二人が現れる。
「先生居ました、こっちです!」

まだ姿が見えない者に向かって不良が叫ぶ。
すると、間延びした声と共に少々小さめの男が現れた。
「それよりぃ、滝君来てくれるのー?」
「は、はい、あいつら倒し次第『69』に行けば入口付近に…」
「本当!?」
まるで子供のように喜ぶ男は、裾を出したワイシャツ姿。髪はセミロングで赤みがかかっている。
心が龍に聞いた。
「あの男、俺には越えし者に感じるが…」
「あぁ、間違いねぇぜ。しかも、俺らと同じくらいの力持ってやがる…!」
「二対一か」
さすが先生と呼ばれているだけある。
後ろで心が刀に手をかけた。
相手は未だに質問している。

「『69の最上階、竹の部屋』だよ?」
「もちろんっス、しっかり一万渡すっス」
「お願いしますぜ先生」
二人は小さい男にぺこぺこ頭を下げる。
その様子に、心が怪訝そうな表情で龍に問う。
「なんの話しだ?」
「あー…69ってのはラブホの事だ。竹の部屋は一番料金が高い部屋だったような…」
「では滝君とは?」
龍はその名前を思いだし、頭が痛くなった。
「…男、だろ?」
心が真面目に聞き返す。
「そのような場所に男二人で入っても良いのか?」
「…知らん」
深く考えないようにする、いや考えたくない。
「よし、じゃあ早く片付けて…」
龍と目が合う。

抜きかけの二本の刀を鞘に戻し、ゆっくりと歩いてくる。
目は龍だけを捉らえ、敵意もなく進んでくる。
心が飛び出そうとするのを片手で制止する。
男は龍の前で立ち止まる、両手を胸の前で組み、口を開いた。
「好きです」
『………』
全てが凍り付いた。
時が止まった。
これは夢か、否。
ならば聞き違いか。
再び男の口が動く。
「付き合って下さい」
『………』
信じたくなかったが、これは現実だった。
心が龍に言う。
「お前の意思は?」
「知るか!」
どこか抜けた心を放っておいて、奥の二人に聞いた。
「お前らの先生って、こんなヤツか?」

自分の体に抱きつくモノを指差しながらそう言った。
「…これだから…!」
「…オカマは…!」
ぷるぷると身を震わしながら不良は先生を睨む。
龍はくっつき虫の顔を無理矢理あげる。
「お前名前は?」
「漆だよー」
満面の笑顔で名乗った。そしてころころと変わる表情は、無垢な少年の顔になる。
「ねぇ、ダメ?」
「付き合うってやつか?」
「うん!」
「俺に服従するなら考えてもいいぜ?」
後ろで心が呟いた。
「労ぜす力を得る…天性の才能だ」
ちょっと違うのだが、あえて突っ込まない。
龍は漆の頭を撫でる。それをくすぐったそう受ける漆。
「なぁ漆」
「なーにぃ?」
「俺は龍。たった今からお前は俺の舎弟だ。漆は龍の舎弟、OK?」
「うん、龍ちゃんの舎弟だね」
「そうだ、いい子だな」
そう言って柔らかい髪をくしゃくしゃにしてやる。
漆は嬉しそうに「えへへ」と笑っていた。
そこで心がまた言う。
「相手を乗っ取る洗脳術…完璧なまでの流れるような手際…見事だ」
(だからちがうっつーの)
心の中で突っ込んでおく。
未だ、どうすればいいのか分からない不良二人が残ってた。漆に言う。
「漆、お前の技が見たい。殺さない程度にあいつら片付けろ」
「ご褒美は?」
「いい子いい子してやる」漆の目が輝く。

「他には!?」
「ん〜…遊んでやる」
子供を扱うように龍は言った。それでも漆は無邪気にはしゃいでいる。
そして腰にあった二本の刀を鞘付きのまま取る。
「頑張るから見ててね」
そう言った瞬間、漆が消えた。
急いで、もはやゴミ扱いの不良を見れば、宙を飛んでいた。
そのまま変な姿勢で落下、アスファルトと頭がぶつかる濁った音が聞こえる。
「終わったよ〜」
「よーし、じゃあそれ捨ててきな」
「はーい」
二人のえりを掴み、ずるずると引っ張って行った。
「凄ぇ使えるな」
漆を見送り、心に話し掛けた。
すると、心は真剣な眼差しで龍を見る。

「龍、頼みがある」
「ん?」
「俺に力を貸してくれないか?あの漆という男も含めて」
龍は大して驚かず、その真意を当てた。
「その世直しってヤツのためにか」
「肯定だ」


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