王様-1
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「太田、なんだコレは……………」
延々と課長の叱責を俺は前傾姿勢30度をまもり30分聞いていた。
毎日の朝の日課のように俺を怒るのが課長の日々のウサ晴らしになり今日の働く活動源になっているようだ。
俺の仕事に怒る訳でもなく仕事なんぞどちらでも良くて叱る事叱られる事が俺の仕事の内で重要な事になっている。
現に俺を叱り飛ばした後、課長は阿修羅のごとき働きだす。
部下の社員は課長の手伝い程度の仕事をするだけで課長の会う相手にアポ入れしたり資料を集めたりしているだけだ。
それも5人くらい………
後の4人は外交と言ってパチスロや競馬場通いをしている。
課長はそんな連中は最初から野放しで怒りもしない。
どっちみち来年は首になる運命だと知っていた。
毎年半分はクビになる会社だった。
40人程度の小さな貿易会社だが大変な利益を得るのは課長のような稼ぐ社員が5人いるからだった。
その5人の良き手足となれる奴だけが生き残っている会社だった。
その手足の人間にも他の会社からは考えられない高給を支払う会社だった。
その中でも太田は良き手足の社員だった。
朝一番で課長のやる気を出させて課長の欲しがる資料も前もって集めていた。
まるで課長の仕事を自分がしているかの如く課長の要する資料を目の前に積み上げる。
見方によれば太田が課長に仕事をさしているようにもみえる。
会社はヨーロッパのアンティーク家具からワインまで法に触れない物なら何でも扱っていた。
単品買いにもおうじてくれるから高額な品物を扱う事が多く、偽物を掴まされたら何ヶ月の儲けがぶっ飛んでしまう。
その代わり儲けも大きくハイリスクハイリターンの会社だった。
稼ぎ頭5人の上は社長しかいなく1人のトップから仕事を持ち込まれて、そつなくこなし稼ぎ捲る会社だったがその社長の上にオーナーがいる事は誰も知らなかった。