転職と就職活動、そして絶望-4
それからしばらく、また履歴書を送り、面接を受け続ける日々が続いた。不採用の文字をみるたびに、まるで自分が社会不適合者の烙印を押されたような気持ちになった。社会全体から『おまえは必要のない人間だ』と指をさされているようだった。食欲は落ち、半年の間に体重は5キロほど減った。収入の無い不安よりも、永遠に仕事が見つからないかもしれない恐怖のほうが強かった。
いったん自分に自信が無くなると、せっかく時間が空いていても友達と会う気にもなれなかった。求職に関すること以外は外出することもほとんど無くなり、焦燥感だけが増していく。
経済的にも精神的にも限界が近付いているのを感じた先週末、志保から電話がかかってきた。
『なぎさ、この会社どうかなって思ったんだけど』
それは志保の会社の上司が持ってきた話だそうだ。会社の規模は志保が勤める会社と同程度の中小企業で、新たにいくつかの部門を立ち上げるので人手が欲しいということだった。募集される業務内容は多岐にわたり、事務、営業、研究職、その他、あらゆる分野で優秀な人材がいればどんどん採用する気だという。
『ただね、わたしも上司も、具体的に何をやってる会社なのかは知らないのよ。ただお世話になってる取引先の部長さんの紹介とかなんとか……条件は悪くないよ、収入もなぎさの前の職場よりも全然良いと思う。もし、興味あったら話だけでも聞いてみる?』
「うん、ありがとう。でも、優秀な人材って……わたしなんかで、いいのかな」
『もう、すっかり弱気になっちゃってるじゃない! まあ、紹介ってこともあるから、よっぽど条件が合わないとかじゃなければ、とりあえず不採用になることは無いと思うんだけどね。なにしろ、先方も早く人を集めたいみたいだったし』
「ほんとに? じゃあ、お願いしてもいい?」
『うん、もちろん。そのつもりで電話したんだもん。紹介してくれた人の手前もあるから、できたらそのまま就職決めてくれたほうが嬉しいんだ。じゃ、また連絡する』
志保の行動は素早く、電話を切って1時間もしないうちに再度連絡が入った。まだ仕事中のようで、電話の向こうの忙しそうな雰囲気が伝わってきた。
『あのね、来週から順次面接を始めていくんだって。なぎさの話をしたら、先方がぜひ来てほしいって。とりあえず面接日時と場所を言うからメモって。履歴書は当日持参でいいみたい』
「ありがとう! ちょっと待って」
志保から言われるままにメモを取り、『大丈夫だから、自信持って行っておいで』と何度も励まされて電話を切った。
今度こそ、採用してもらわなくちゃ。
通帳の残高は10万円を切っている。もう仕事を選んでいる余裕も無い。これでダメならアルバイトでもなんでも始めないと、来月から家賃の支払いにも事欠くようになる。なぎさは決意も新たに履歴書を書き、度重なる面接でよれよれになったスーツをクリーニングに出し、土埃で白っぽくなったハイヒールをピカピカに磨き上げ、着古したシャツも真っ白に漂泊して丁寧にアイロンをかけた。
今度こそ、絶対に採用してもらう。絶対に。