Purple target-9
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―――ブロォォォ・・・・
「・・・・・・」
サングラスをかけて照りつける夏の日差しをかわしながら、彼女が車を走らせる場所は
“あの海岸”。
数年前、“あの男”と初めて出逢った、穴場の入江だった。
―――ザッ、ザッ、ザッ・・・・・
車を降り入江に至る小道を慣れた足取りで危なげなく歩む。
入江の一角、細かい白砂
で形成された砂場に降り立ったルーは周囲に聳え立つ絶壁をぐるりと見渡した。
彼女のいる場所は島で一番切り立った崖と入り江の狭間に位置しており、一見してその場所は陸地側からは死角の位置にある。
入江の中に広くはないが白い砂浜と、
入江に打ち寄せる透明度の高い海水も打ち寄せている。
それ以外の音らしい音は微かな小鳥のさえずりくらいで、
1人で静かな時間を過ごしたい者にとって見れば最高の空間ともいえる。
そう、“あの日”も夫ワッカがいない時間の空白を埋める為にここに足を運んだのだ。
(今更・・・ここに来てどうしようってわけかしらね・・・・)
下りの小道から砂浜へ降り立ちながら、
ルールーは感情の赴くままにここに立っている自分自身に対して自嘲していた。
(・・・それとも、ここにくれば今の欝した気持ちを落ち着けると感じたのだろうか・・・・)
(・・・・あれは・・・)