Purple target-37
―――ガチャッ・・・
眠っているイサールを起こさないように音をたてずに部屋を抜け出した後、
そのままバンガローの入口のドアを開けて素早く閉める。
先程まで室内に充満していた、様々な香りの混ざった濃密な臭いは既に感じることなく、
代わりに夜のやや冷えた空気がイブニングドレス姿のルールーを包み込んだ。
―――ホォォホォォ、 ホォォホォォ・・・・
ルールーの耳に、
どこからともなくフクロウの鳴き声が聞こえてくる。
そんな彼女の中にあるのは、久方ぶりに感じる精神的な充足感。
(・・・次はつい逢えるだろうか)
交情の合間に約束した自前の大型ヨットへの招待。
かつてラグナを招待した時を思いだしながら、
ルールーはイサールの枕元にキスマーク付きのメッセージカードを置いておけば良かったかなと内心苦笑していた。
そのままゆっくりとした足取りでホテル本館に近づいていく中、
先程まで微かに聞こえていたフクロウの鳴き声が途絶え、
少しの間の後
何かが羽ばたつ音がルールーの鼓膜を震わせた。
―――バサバサッッ・・・
――――この時を境に、 ワッカ夫人ルールーは文字通り消息を絶つ。
―――警察は連続失踪事件5人目の被害者として、
ルールーの消息を追ったが、
彼女の姿は忽然と消えた。
―――夫ワッカや若手政治家イサール含め関係者への取り調べを行ったものの、
ルールーの行方は今に至るまで明らかではない・・・・・。
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