Purple target-3
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『・・・次のニュースをお知らせします。現在観光で島を訪れていた女性の連続失踪事件について、警察は―――』
「・・・なあ、ルー」
「え?どうしたの、ワッカ」
「いや・・・何か最近お前元気ないからな。もしかして身体の調子が悪いのかなって」
いつも通りの朝食の風景。
島の北海岸沿いに幾つか密集している住宅地のうち、
南の島らしく椰子の葉で葺いてある木造と現代風な造りが融合したような平屋の建物がワッカ・ルールー夫婦の住居である。
そして今彼等が普段着で息子を交え朝食をとっているのは、
1番海に面しており潮風も入ってきやすい吹き抜けの空間だった。
ラジオから流れるややざらついた音質のニュースの声が吹き抜けの食卓を流れる中、
ルールーは正面から自分の顔を心配そうに覗きこんでくる夫に対し、慌てて首を振る。
「だ、大丈夫よ。私はいつも通り。別に病気になっているわけでもないわ」
「そうか・・・でも最近、ルーを見てるとどこか元気がないからな。何か心配事とかあるんじゃないか?」
「そんなことないわよ・・・・ちょっと家事続きの疲れでそんな風に見えてるのかもね」
「そうかもな・・・最近ルーに頼りっぱなしだし、何か息抜きしたい時は遠慮なく言ってくれよ。
俺だけじゃなくてイナミも元気なくなるから」
「だぁぁ、だぁぁ・・・・」
「ありがとうワッカ、イナミ・・・」
夫に対し殊更笑顔をつくり心配げな表情を浮かべる傍らの息子の頭を撫でながら、
ルーは“数日前の出来事”とそれ以降“彼女が見るようになった夢”について想いを巡らせた。