Purple target-27
やがて
広い芝生の海のあちこちに点在するバンガロー群の中で、
目的のバンガローの正面にたどり着いたルールー。
―――ピンポーン・・・・・
『―――――空いている。そのまま入ってから、奥から2番目の部屋に来てくれ』
こちらが言葉を発する前にインターホンを通じてイサールの指示が流れる。
既に自分を迎える準備はできているのだろう。
これから始まることへの期待感を胸に秘めながら、
ルールーはそのままドアノブを握ると勢いよくドアを内側に押し開く。
再びドアが閉じられる時にはバンガロー内の廊下を進んでいた。
滞在者が1人ということを考慮した1人用バンガローということもあって、
ここに初めて来るルールーでさえ迷うことはない。
建てられてから日が浅いせいか、バンガローの中にはどこか新築直後特有の雰囲気と香りが漂っていた。
そのまま目的の部屋の前につく。
ドアの隙間からは室内の光が漏れ、
ドアの向こうには確かに人の気配がする。
「・・・・・・」
一瞬の沈黙の後、
ルールーは“1人の女”としてこのドアを開く―――――
££££££££££££
「しまった・・・これほどとは」
男は自分自身の予測の不確実さに内心歯噛みする思いだった。
彼女の自宅前から海鮮レストランまで尾行し、
そこから更に彼女の車が、男自ら宿泊しているスピラホテルに向かって車を走らせるところまで、
ある程度距離を離した上でピッタリとついていた。
男の予想では、
ホテルの本館に泊まっているであろう入り江にいた男の部屋にいくのだろうと予測をつけ、
受付付近に先回りしルールーがそこに来て部屋番号を確認すると思われる瞬間を捉え、
その後何らかの形で“捕獲”し自らの部屋に連れ込めればと考えていた。
だが後から確認した事項で彼女が受付には顔を出さず、地下にあるホテルのバーに行き、
しかも男が予想しなかった短時間でホテルを出たらしいのだ。
それもこれも男がホテルの従業員数人から無理に聞き出した目撃情報を総合したものだった。