Purple target-25
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「こ、これは・・・久しぶりと言いますか、何というか・・・いつ以来ですかな、貴女の姿をここで見ることができるとは」
「イナミが産まれる直前以来かしら、メイチェンさん」
階段を降りてきてそのままカウンター席に座ったルールー。
意外な人物が目前に現れたことに、カウンターにいた老マスターは思わず感嘆と当惑の溜め息を漏らしていた。
―――スピラホテル
―――地下1階のバー
その夜バーを訪れたルールーの出で立ちは、
最後にここで彼女を見た時とは幾分衣装や色合いが違うものの、
何となく妖しい色気を醸し出す“熟女”ぶりは同じであった。
周囲の席についた幾人かの客も、
カウンター席に座ってマスターと向かいあっているルールーの容姿と背姿に熱い視線を向け、何事かひそひそと囁きあっている者もいた。
「・・・その出で立ち、何か催し物でもありましたか」
「今夜はユウナたちと女同士で夕食会。ほら、今話題の海鮮レストラン」
「・・・ああ、NAGIですか。最近よく耳にしますな」
「そのついでというか・・・・今夜は久しぶりに羽を伸ばしたくなってね。その前にここで一杯飲みたい気分になったのよ」
「それはそれは光栄ですな・・・何なら一杯と言わず何杯でも飲んでもらって結構ですよ」
「いやだわメイチェンさん、そんなに飲んだら酔ったまま次はどこへ運ばれるか分かったものじゃないわ」.
「はっはっは、冗談ですよ」
もっともマスター自身、 ルールーの返事を聞いて
彼女がかつて旅行者ラグナと目の前のカウンターにいた時に似たようなやり取りをしていたことを思い出していた。