Purple target-14
ルールー自身、こうやって1人の女として男と向かい合うのは久しぶりだった。
ともすれば自分には夫や息子がいることも、
ついさっきまで頭を占めていた“過去の思い出”や“茂みの中の凶行”のことまで忘れかけつつあることに少なからず驚いていた。
今更ながらに自分は多情な恋を求める女であることを再確認する思いだった。
文字通り目と鼻の先に男らしさを醸し出す男の顔があり、
彼の吐息や鼻息がルールーの頬や口許にかかっている。
否応なく彼女の官能の炎はゆっくりゆっくりと高まっていく。
「・・・ルールー、と呼んでいいかな。私のことは、そのままイサールと呼び捨てにしてもらっていい」
「いいわイサール、何かしら?」
「その・・・ルールーは、結婚しているのか?」
「一応ね。これでも1歳になる息子もいるのよ」
「なるほどね・・・・」
「がっかりした?」
「いや・・・納得したよ。君の身体と魅惑的な雰囲気は、“人妻”と“母親”だからなんだってな」
「見ただけじゃ分からないものもあるのよ・・・・・」
「ん?・・・・――――」
‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡
「 !!! 」
単眼の望遠鏡で2人の様子をじっと見つめていた男の瞳孔が一気に拡大した。
彼の額にピシリと太い青筋がたつ。無論意識を集中させている男自身はそのことに気づいていないが。
(・・・・・・・)
知らず知らずのうちに男の胸の動悸は激しくなり、 呼吸も荒くそして早くなっていた。
レンズの向こうで繰り広げられている光景。
それはぴたりと寄り添っていたイサールに対してルールーが静かに顔を近づけ、唇を重ねている光景だった。
それに合わせて、
ルールーの左手がイサールの右手首に添えられ自らの下腹部に導いているのである。
イサールの右手の指が、切れ込みの大きいルールーの水着をずらして直接その奥へ差し入れているのが分かる。
そして重なりあった唇の間で互いの舌が相手のものを絡めているのも分かる。