Purple target-13
この僅かな時間の間、
ルールーはイサールの視線が自分から離れていなかったことに気づいていた。
夫以外の男にこれだけ密着し熱い視線を受けたのは、本当にいつ以来のことだったろう。
無理もない。
彼女の妖しい美貌に加え、ぴっちりと身体に張り付いた水着ごしに分かる豊かな肉の弾力を見てしまえば
大抵の男は視線を逸らすことなどできはしない。
ルールーは両足を組んで両腕で膝を抱くような体勢のまま再び傍らのイサールの方を向く。
イサールの方は右膝を立てた状態でルールーの顔をまじまじと見つめ続けている。
否応なくルールーの胸の奥は微かな熱を帯びた。
「・・・いつからこの島に?」
「・・・・まぁ、今更隠しても仕方ないか。この島にはお忍びで2日前に来たばかりでね。特に決まった予定はないけれど、最近忙しかった頭を冷やしにきたと言えばいいのかな」
「どこに泊まっているの?やっぱりスピラホテル?」
「半分正解、かな。
一応本館だと人目につきやすいから本館裏に幾つか建っている別館・・・バンガローかな。その1つにいる。勿論偽名は使っているが」
「政治の世界は大変そうね。夏の終わりじゃないと休みもとれないなんて・・・・・・」
「まぁ今回だって休みというか、自分で勝手に来たみたいなものかな。
自分から息抜きしないと、誰も面倒見てくれないからね。
・・・・おっと、いけない。肝心の貴女の名前をきいていなかったな」
「ルールーっていうの。よろしく・・・・」
「ルールー・・・いい名前だ。今の貴女にぴったりの素敵な名前だよ」
「そう言ってもらえると嬉しいわ」
波の音以外、先程と変わらない。鳥のさえずりさえ聞こえぬ入り江において、
何気ない会話が弾んだ調子で紡がれていく。