牧場と露天風呂-3
牧場の一角に自然食レストランがあった。7人はそこで昼食をとることにした。
「茹でたオーガニック野菜の盛り合わせ、ヨーグルト豚のソテー、」ケンジがメニューを見ながら言った。
「『ヨーグルト豚』?」
「ヨーグルト状に発酵させたえさで育てた豚なんだと。揚げ豆腐のオイスターソース、地鶏の冷製オードブル、ヤリイカとジャガイモのニンニクソース。」
「何で山なのにヤリイカ?」
「知るかよ。」
「でも、どれもおいしそうね。」マユミが言った。
「バイキング形式だ、お前ら、先に取ってこい。」ミカが子どもたちを促した。
「うん。」三人は席を立った。
間もなくウェイターがピッチャーを持って彼らのテーブルにやって来た。「先ほどの牛乳でございます。低温で殺菌してありますので、風味を損なっておりません。どうぞ、お召し上がり下さいませ。」
「ありがとう。」ミカがそう言って、ピッチャーから7つのグラスにその搾りたての牛乳を注ぐと、ケンジがそれぞれの前に並べた。
龍と真雪がテーブルに戻ってきた。龍の持った皿には山のようにいろいろな料理が積み上げられていた。
「龍、お前のそれはもはや料理ではなく生ゴミだな。」ミカが呆れて言った。「一度に持って来なくても、また取りに行きゃいいだろ、まったく・・・・。」
「真雪はそれだけか?」ケンジが言った。
「いろいろ少しずつ食べてみて、気に入ったのがあったら、また取りに行く。」
「龍、お前のハニーを少しは見習え。」ミカが言った。「そんな行儀の悪いとこ見られたら愛想尽かされるぞ。」
龍はすでに皿の料理をがっついていた。
テーブルに健太郎が戻ってきた。「奥にチョコレート・ファウンテンがあったよ、父さん。」
「何っ?!ほんまか?」ケネスは立ち上がった。
「さすがチョコレート職人、さっそくリサーチする気なんだな。」ケンジが言った。
食事を終えてレストランを出る時、ケネスはレジのウェイターに何やら話しかけていた。ケネスの話を聞き終えたウェイターは、彼を連れて、奥のスタッフルームに向かった。
「どうした?ケニー。」ケンジが声をかけた。
「ちょっとここの支配人と話してくるよってに先に宿に戻っててくれへんか?」
「わかった。じゃあ、用が済んだら連絡しろよ、迎えに来るから。」
「そうやな。手間取らせて悪い、ケンジ。」
「気にするなよ。」
ミカが駐車場の車に向かいながらマユミに話しかけた。「ケネス、何か思い立ったのかね。」
「きっと、商談だよ。」
「商談?チョコレートの売り込み?」
「さっきの牛乳に感動してたから、ケニー。もしかしたら、うちで作るミルクチョコレートの原料を調達しようとしてるのかもしれないね。」
「なるほど、そういうことか。」
「もしそうなれば、うちのチョコレートをここに提供することもできるしね。」
「ケネス、まじめに働いてるじゃないか。感心感心。」