牧場と露天風呂-2
「意外に広い牧場だね。」龍が車から一番に降りて言った。そして続いて降りてきた真雪の手を取ってビジターハウスに向かって駆け出した。
「龍のやつ、」ミカが言った。「あのはしゃぎよう。ただ事じゃないね。」
「幼児並みだな。」ケンジも言った。
「無邪気でいいじゃん。」マユミが微笑みながら言った。「身体は大きいけど、真雪の弟って感じだよね。」
「その『弟』と、すでに深い仲なんやろ?真雪のヤツ。」
「ケニー、認めてないの?」
「いや、龍やから許す。変なムシが真雪につくこともあれへんやろうからな。」
「えー、そんな理由?もしかしたらあたしたちの息子になるかもよ。龍くん。」
「わかってるがな。でもそうなったところで、今とあんまり変われへんな。」ケネスが笑いながらビジターハウスに向かって歩き始めた。
「真雪、馬に乗りたいだろ?」ケンジが言った。
「うんっ!」真雪は元気よく言った。
「乗っておいでよ、マユ姉。」
「なんで真雪はあんなに乗馬が好きなんだ?ケニー。」
「ようわからへん。ちっちゃい頃にポニーに乗せてやったらはまってしまいよった。」
「今も月に一度は乗馬クラブに通ってるんだよ。」
「そうだってな。」
裏に広がった牧場の周りを取り囲むように、木の柵で仕切られた道が作られている。すでに一頭の馬に跨がっていた真雪が手綱を持って言った。「龍くんも乗りなよ。」
「え?ぼ、僕はいいよ。」
「何で?怖くないよ。」
「こ、ここで見てるよ。っていうか、写真、撮ってあげるよ、マユ姉が馬に乗ってるとこ。。」
「そう?じゃ、行ってくるね。」真雪は馬の首を何度か優しく撫でた。馬はしっぽをゆっくりと振りながら鼻を伸ばした。
「お嬢さんには、ガイドは必要なさそうですね。」馬の横についていた若い男性がちょっと感心したように言った。「乗馬の経験がおありですか?」
「はい。もう10年ぐらい前から。」
「そりゃすごい!僕よりずっとキャリアは上だ。」
真雪は手綱を引き、馬をゆっくりと歩かせた。龍は手に持ったカメラを構えて何度もアングルを変えてシャッターを押した。
「ねえねえ、ケン兄、」
「なんだ?」
「馬の後ろ足の間の、あの物体って、なに?」
「物体?ああ、あれはお前、馬のアレだよアレ。」
「でかっ!」龍は驚いて叫んだ。「あ、あんなものでエッチするの?馬って。」
「お前、何考えてんだ?」
「だ、だって、あのでかさ、普通じゃないよ。僕のに比べて10倍ぐらいの大きさはあるんじゃ?」
「何でお前、自分のと比べるかな。それとも何か?お前マユがあれでやられてるのを想像してんのか?」自分で言いながら健太郎は赤面していた。
「マユ姉、喜ぶかな・・・。」
「ばかっ!変な想像するなっ!」
龍は馬に乗って遠ざかっていく真雪を見つめていた。一瞬、彼女が全裸で馬に跨がっている姿が脳裏に浮かんだ。龍は自分の身体の中で熱い気泡がいくつも弾けたような気がした。
いきなり後ろの方からミカの声がした。「おーい、龍、おっぱい触りたくないかー。」
健太郎と龍は慌てて振り向いた。「な、なんてこと言ってるんだ、母さん。こ、こんな所で、誰のお、お、おっぱいを、」
「牛だよ、牛。乳牛の乳搾り、してみないか、って言ってんだよ。」
「だ、だったら最初からそう言ってよ。びっくりするだろっ!」
近くにいた観光客が一様にくすくすと笑った。
「もう、恥ずかしいったらありゃしない・・・。」龍はぶつぶつ言いながら、その牛舎に入っていった。
「じゃあ、ここに座って下さい。」ガイドの若い女性が言って、龍と健太郎を乳牛の横にある木の椅子に座らせた。
「でかっ!」また龍が言った。「牛のおっぱいって、実際に見るとかなりでかいね、ケン兄。」
「お前、今度はマユのと比べようってのか?」健太郎がいぶかしげに言った。
「こうして、手を添えて、指を一本ずつ人差し指から、」ガイドの女性はそう説明しながら実際にやって見せた。「わかりましたか?」
「はい。やってみます。」
背後に立ったケンジが言った。「搾ったミルクは搾っただけ飲めるんだと。」
「いっぱい搾ってくれよ、龍。」ミカも言った。
「がんばって。」マユミがソフトクリームを舐めながら言った。
「マーユ、それわいにも舐めさせてーな。」
「いいよ。はい。」マユミは持っていたソフトクリームをケネスに手渡した。ケネスはそれをぺろぺろと舐め始めた。
「おお、めっちゃうまいソフトクリームやな。やっぱ、原料のミルクから違うんやろうな・・・。」
龍はおそるおそる目の前の牛の乳房に触った。「あったかい!ケン兄、あったかいよ。それに意外に柔らかくて気持ちいい。」
「そうか、そりゃよかったな。」
「なに?なんでそんなに無愛想かな。」
「お前が次に口にする言葉を、想像してんだよ。」
「え?」
「マユのおっぱいよりあったかいだの、マユのおっぱいの方が柔らかいだの言うんじゃないかと思ったんだよ。」
「マユ姉のの方が柔らかくてあったかいよ。」
「まったく・・・・・。」
「あたしの何が柔らかいって?」不意に二人の背後から声がした。
「えっ?!」健太郎と龍は同時に振り向いた。「マ、マユ姉!」
「よく聞こえなかった。あたしがどうしたって?」真雪は微笑んで龍の横にしゃがみ込んだ。龍は真剣な顔で牛乳を搾り始めた。
「マユ、この牛のおっぱいより、お前のの方があったかくて柔らかくて気持ちいいんだとよ。」健太郎がおかしそうに言った。
「やーね、龍くんのエッチ。」真雪は軽く言って微笑んだ。
「な、なんと!予想外のリアクション!」健太郎は意表を突かれて仰け反った。
龍は顔を赤くしながら無言でひたすら乳搾りを続けた。