家族-4
今まで母の前では泣いた事などなかった。しかし気分は何故か幼い時代に戻ったような隼人。小さな子供が親に弁明するような姿を見せる。
「妹だって思いながらも、心のどこかで本当の妹じゃないからって思ってしまったのかも知れない。妹としてではなく、俺は友美の事をずっと一人の女として見てたのかも知れない。ごめん、お母さん…。俺、お母さんの信頼を裏切り続けてた。」
そんな隼人の、頭を撫でる香織。
「私はね、ずっと前から2人の関係には気づいていたわ?」
「えっ…?」
友美は驚いた。しかし隼人はそれを知っていたかのように動揺しない。
「隼人はなんとなく気づいていたでしょ?」
「…うん。」
「いつも色んな気配りが出来る隼人が気づかないとは思ってなかったわ?でも、2人の関係を知ってて黙ってたのは、私がそうなる事を望んでいたからなのよね。」
「えっ!?」
意外な言葉の連続に驚きっぱなしの友美。
「私は小さい頃から友美の面倒を良く見て、どんな事からも守ろうとする隼人を見て、もし隼人が友美の旦那さんになったら、友美は幸せになれるんだれはうなって思ってた。いつかそれを本気で思うようになってたわ。そうしたら本当の意味でずっと3人は家族でいられるしね?もっと早く言いたかったけど、私もなかなか勇気がでなくて。だから隼人が謝る事なんて一つもないの。私の夢を叶えてくれた、本当に親孝行な息子なんだから、ね。」
「お母さん…!」
小さな頃から胸につかえていたものがなくなった気がした。
「じ、じゃあ私は堂々とお兄ちゃんと付き合えるし、結婚もできるって事…?」
「ええ。ただし、お兄ちゃんとではなく笠原隼人君と、だけどね。友美、あなたにも色々辛い思いをさせたり悩ませちゃったわね?ごめんね?」
「お母さん!」
家族3人、一つになり幸せを噛みしめた瞬間だった。