家族-3
言葉を頭に思い浮かべながら慎重に言葉を選ぶような様子の母、香織を見て、隼人は先に口を開く。
「違うんだよ、友美…。」
「何が違うの!?」
悲しさと若干の怒りを含ませた泣き顔で隼人を見る友美。
「お母さんは酷い事を言ってないし、
むしろ愛情溢れた事を言ってくれてるんだ。自分にだって世間から色々言われるだろう事を承知で、ね?」
「隼人、あなたやっぱり分かってたのね?」
「ああ。」
意味が分からないのは友美だけだった。
「な、何?何が分かってたの??」
見つめる友美に隼人は言った。
「友美は小さすぎて覚えてなかったと思うけど、俺は覚えてるんだ。いや、始めから分かってた。」
「な、何がよ??」
言いづらそうに口を開く隼人。
「お母さんとお父さんは、お母さんは友美を、お父さんは俺を連れて結婚したんだよ。」
「えっ…?えっ…?」
あまりに想像だにしなかった言葉に理解出来なかった。
「つまり、お母さんとお父さんは、再婚同士なんだよ。」
「えっ?えっ…?さ、再婚同士…?」
「…」
香織はどこまで隼人が知っているのか確かめる為に黙っていた。
「て、事は…?」
「俺と友美は…本当の兄妹ではない、という事だよ。」
「えっ…!?」
あまりに衝撃的な言葉に嬉しいのか悲しいのか分からない。
「お母さんは籍を外すと言った。この家から出ていけとは言ってないんだ。その意味が分かるか?」
「意味…?」
「ああ。それは、俺を籍から外せば俺と友美は赤の他人だ。兄妹では出来ない恋愛…、そしてその先の結婚まで出来ると言う事だ。」
「あっ…」
ようやく理解出来てきた。
「隼人…、やっぱりあなたはたいした子だわ…。小さな時からそうだった。お父さんが亡くなった時…」
そこで隼人が言葉を遮る。
「それは俺に言わせて?お父さんが死んだ時、俺、お母さんに捨てられたら1人で生きていかなきゃならないのが凄く怖かった。だって連れ子の俺をずっと育てる義理ないんだからね。だから俺、この家族のままでいられるよう、必要とされる人間になろうと思ったんだ。お父さんの代わりをする、お母さんを助ける、友美を守る…、思い当たる事はなんでもしようと思ってさ。」
「私は小さいのに、お父さんの代わりをしようと頑張るあなたを見て、絶対隼人は私の息子として一生家族でいようと決めたの。もしかしたら私の本当の子供ではないって気づいてるかもしれないし、なら捨てられるんじゃないかと心配してるんじゃないかって思った。そんな隼人を私は絶対守る、そう決めたの。でも助けられたのは私のほうで、いつも申し訳なく思ってたし、でもいつも私の自慢の息子だった。今もそう。これからもそう。私の大切な自慢の息子。」
「お母さん…」
不覚にも涙を浮かべてしまった隼人だった。