叶えられた想い-1
心を通わせたキュリオとアオイ。
キュリオは未だかつて伴侶というものが存在しなかった。悠久の王として即位したそのときの記憶さえ今となってはおぼろげなものだ。
女神さえもキュリオに惚れ込み、愛を告白されること数知れず。それでもキュリオは特別な人を作ることはなかった。悠久の民も霊獣も自然も女神たちも・・・全て平等に愛していた。
寿命に違いはもちろん、どの女性にも運命のようなものは感じなかった。
たった一人。
あの日、霊獣の森で見つけた赤ん坊。ユニコーンが守るように寄り添っていた、それがアオイだ。
孤児を王宮で育てるのは初めてではない。なぜあの子が手放せずに傍においていたのか・・・まだ独り歩きも出来ぬアオイを抱いて私室で眠らせることもあった。
暇を見つけてはハープを聴かせたり、霊獣と戯れる時間を作った。いつの間にかアオイは私を父と呼ぶようになり、その響きが最初は嬉しかったのだが・・・。
世話係のカイと楽しそうに会話しているアオイを見て違和感を感じるようになった。私がアオイに依存しているのだと理解した。父であるならば子の成長を見守るもの。アオイもその時期に来ているのだと頭ではわかっていたつもりだった。
日々美しく成長するアオイから目が離せなくなった。贈ったドレスを嬉しそうに着て見せに来る姿など・・・他の男の目に触れぬよう囲ってしまいたい衝動にかられる。
どうにもならぬ想いを抱き続けていたところにティーダが現れた。
私はきっと気が付かないふりをしていたのだろう。だが・・・もうこの気持ちを偽ることは出来ない。
例え彼女が私の気持ちに応えてくれなくとも、たった一人愛した女性としてこの想いは封印し・・・父という仮面をかぶり続けることは覚悟していた。
しかし・・・
アオイは私に応えてくれた。
これ程の喜びが他にあっただろうか・・・。
しかしまだ子供の身。
焦って傷つける事などしたくはない。ゆっくり身も心も大人になるその時を待とう。
アオイを抱きしめて眠るキュリオの顔には至福の色が浮かんでいた。