白昼の出来事-1
悠久の国は常春だが、この国はまるで永遠の夜と例えたほうがいいだろう。キュリオのまとう美貌や光、銀髪は目立っていた。多くの女吸血鬼たちがキュリオを艶やかな眼差しで見つめている。
ほどなくして使いの者が現れ、ティーダのいる城へはあっけなく通された・・・。
その頃アオイは民が間もなく城に到着すると聞いて中庭で待っていた。お茶の準備をしてくれる女官と他愛もない会話をしながら。
そこに家臣に付き添われて大きな箱を手に、漆黒の衣をまとった男性が現れた。
「お初にお目にかかります。お会いできて光栄ですアオイ姫様」
うやうやしく一礼され、アオイも慌てて頭を下げた。
「こちらこそお会いできて光栄です。このたびは父、キュリオが不在の為わたくし一人で申し訳ありません」
「・・・それはそれは好都合」
「・・・?」
なんとティーダは留守だという。
いつ戻るのかと聞いてもわからないという返事が返ってくるばかり。すると色気をまとった女官が現れ、
「悠久国のキュリオ様、噂に違わぬお美しさでございますわね。ティーダ様が戻られるまで、どうぞごゆっくりなさって?」
流れるような動作でキュリオの頬をなでる。しかしその手をキュリオは払った。
「ティーダがいないのであれば私はこれで失礼する。アオイには近づくな。そう伝えろ」
アオイへ宛てられたあの手紙を大理石のテーブルへ叩きつけた。
それを見た女官が意味深に笑う。
「ティーダ様は今頃アオイ姫の元におられるかと思いますわ」
キュリオの顔色が変わった。
(まさか・・・アオイ・・・!!!!)
すぐさま悠久で最も速い黒曜を召喚しキュリオは身をひるがえした。キュリオの呼びかけに応じるように黒曜が猛々しく吠える。
(お父様がいないのが好都合?)聞き間違いかと思ったアオイは首をかしげる。異変に気が付いたカイが真っ先にアオイの前に立ちはだかった。
「貴様・・・悠久の民ではないな!?」
「そう。俺は吸血鬼の王・・・ティーダ!!!!」
漆黒の衣を翻したとたん黒のドラゴンが3体召喚された。
「きゃああああっ!!!」
女官たちから悲鳴があがる。
はっとしたアオイはすぐさま結界の印を結ぶ。自分を中心とした光の柱が立ち辺りを包んだ。
「姫よ、それで俺と戦うつもりか?」
「・・・え?」