穏やかな日々-1
あのとき拾った赤ん坊は人で言えば15歳になっていた。
キュリオの見た目は25歳程だが、実年齢は500を超えている。王たる者の寿命は人のそれとはまったく別のものだ。
だからアオイと名前が付けられたこの少女さえキュリオの一生で見てしまえば一瞬の輝きとなるだろう。いつか人の一生分の寿命を終え消えてしまうだろう。わかっていながらも自分を慕い傍を離れぬこの子が可愛い。
今もふたりで夕食のテーブルを囲んでいる。
人懐っこいアオイは皆からとても愛され、誰もが自分の子のように可愛がっていた。
夜の廊下などは恐怖心からか・・・私の足にまとわりついて移動する。怯える肩を抱いてやると安心したように笑うアオイが本当に愛らしい。
数年前より、城守のカイと剣の稽古もしているようだ。彼の剣を見てとても喜んでいたので、私の神剣を見せたことがある。
「これは王様の剣なのですか!?」
目を輝かせながら、触れるか触れないかの距離をうろうろしているアオイ。
穏やかに頷くキュリオ。
「でも他の王様の武器もいろいろあってね・・・」
「カイの剣も素敵だけど、お父様の剣はもっと好きっ!!」
素敵と好きの違いに気が付いてないだろうこの幼子の頭をなでた。
「うん、アオイの“好き”は私のものだ」
「はいっ!アオイの“好き”はお父様です!!」
言葉がなんとなくおかしい気もするが、頬を染めて無邪気に笑うアオイが何よりも愛しい。
「アオイもお父様のように強くなりたい!カイにも負けないくらいに!」
傍に控えていたカイが、
「俺も負けませんよ?
姫様はまず・・・おひとりで眠れるようになりませんと俺には勝てません!」
ムキになったアオイがこっそり私の顔を覗き見している。
「私が寂しいからアオイに一緒に寝てもらっているんだ、そういじめないでやってくれ」
「キュリオ様はお優しすぎです!!
アオイ姫様が親離れ出来なくなってしまうではないですか!!」
私の言葉に嬉しくて飛び跳ねているアオイが抱きついてきた。
「カイも寂しいなら一緒に寝てあげてもいいよっ」
(・・・それは困るな)と本気で悩んでいるキュリオがいた。