第1章-9
美紗子は、しばらくすると事務の女に連れられて、ある部屋に案内された。
その部屋の前で、女が部屋の扉をノックした。
「社長、お連れしてきました」
中から返事が帰る。
「どうぞ」
「失礼致します」
そこの社長の部屋だという。部屋には彼以外誰もいない。
そこにいた男は、紳士然とはしているのだが、どこか脂ぎった感じがする。
美紗子は緊張し、なぜか落ち着かない。
「いらっしゃい、そこに座ってください、私は社長の朝井と言います」
「あ、はい、岩崎美紗子と申します」
「美紗子さん、貴女が百合子さんの友達の方でしたね」
「はい、よろしくお願い致します」
「わかりました、それで、百合子さんとの関係は?」
「彼女とは、同じマンションの方で、そこで知りあいました」
「なるほど、マンションを新しく購入されたんですか?」
「はい、そうです」
「では何かとお金が必要でしょう、それでここへ?」
「あ、はい・・」
美紗子は心を見透かされたようで恥ずかしかった。
「そうですか、でもここの女の子にもそういう人がいますよ」
「はい、そうなんですか・・」
美紗子は、そういう理由の人がいると知り、ほっとする。
「それで、美紗子さんは、沢山働きたい、そういうことですね」
「あ、はい・・出来るだけ」
ここまで来れば、美紗子は正直に全てを言おうと思った。
今までの雰囲気で何となく採用される気がしたのだ。
しかし、その仕事の内容がとても気になるのだが・・・
美紗子は自分の美貌には少しは自信がある。
あの百合子でさえ、3,4日で10数万稼げるのなら、
自分ならもっと・・・そういう欲が出始めていた。
美紗子は心の中で、この社長に気に入られようと思った。
心の中で、何故か美紗子は、この浅井という男との関係を感じるのだ。
それは、インスピレーションというか、女の鋭い勘・・である。